厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータ(令和6年、全企業)を年収に換算し、それを学歴別、年齢階層別に示してみた(下表中のA欄、B欄)。例えば大卒で25~29歳の人は、この年齢階層に属している5年間で1703万4000円の賃金を得ている。

なお「賃金構造基本統計調査」のデータは、働いた場合の平均賃金であると解釈し、高卒は18歳から、大卒は22歳から、その賃金を得ると仮定している。つまり、高卒の場合は~19歳階層では2年間、大卒の場合は20~24歳階層で3年間、その他の年齢階層では5年間、それぞれ賃金を得ることを前提としている。
C欄の数字は、この仮定に基づいて計算した大卒と高卒の年収の差を、年齢階層ごとに合計した結果である。~19歳階層と20~24歳階層においては、この値がマイナスになる。これは、大学在学中に働かないことによる「逸失所得」を表わしている。
その他の年齢階層においては、Cの値はプラスになる。これは、大卒の平均賃金が高卒の平均賃金より高いからだ。
大学進学による逸失所得は30代で取り戻せる
C欄の数字の累積値(~19歳から、当該年齢階層までの合計)をD欄に示した。D欄の数字は、最初はマイナスだ。しかし、30代の終わりごろにプラスに転じる。つまり、この時点で逸失所得を取り戻せるわけだ。
D欄の数字はその後も増え続ける。そして、65~69歳階層では5343万3600円となる。本稿の冒頭で「学歴によって生涯で4000万~6000万円程度の差が生じるといわれる」と述べたが、それが実証された形だ。
ただし、以上の議論は単純なもので、いくつかの重要な要素を無視している。



















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