英「エコノミスト」が始めた新しいネット戦略

ユーザーの「注目」をネット広告の通貨に

スリダー氏はこう付け加えた。「画面上に現れる(インビュー)のが、5秒間以下のものはすべて『意味のあるアテンション』とはしない」。同社ディスプレイ広告をめぐっては、米インタラクティブ広告協議会(IAB)が提示する、広告ピクセルの半分が画面に現れた基準も満たすと語った。

この動きは、「FT」がタイムベースの広告販売を開始したことを追いかけるものだ。「FT」は2014年時点で、すでに時間ベースの運用方法を発表。エコノミストも歩調を合わせ、デジタル版の全画面型広告で、ユーザーの広告画面滞在時間を最大750時間まで広告主に保証する仕組みを開始。ユーザーごとの滞在時間を加算していく方式で、CPHのたたき台だった。

「FT」のタイムベース広告と差別化

「エコノミスト」と「FT」は、英教育・出版大手ピアソンが保有していた、経営者層を読者に持つプレミアム経済媒体だ。ピアソンは2015年、「FT」を日本経済新聞社に売却、「エコノミスト」の株式50%を伊エクソールなどに売却しているが、両社とも「アテンション取引」を目指す方針は変わっていない。

しかし「エコノミスト」は、自社CPH商品に「FT」とは異なる点を設けた。1回のインプレッションあたりの加算時間は、最大30秒という上限を設定。理由は、「エコノミスト」は速報ニュースに比べ、より深掘りの分析記事に特化しており、読者はより長い時間を費やす傾向があることだ。実際、1訪問あたりの平均滞在時間は7分29秒に及ぶ。週末に訪れたアプリ版の読者に限っては、45分20秒という驚異的な数値を叩き出している(「エコノミスト」調べ)。

スリダー氏はこう説明する。「広告主が1時間の『時間』を購入し、その号ではデータ没入型のインフォグラフィックが掲載され、読者は滞在時間のすべてをそのコンテンツに費やしたとする。その広告は、20分間もスクリーンに収まることになる(1人の読者で広告主が購入した時間の3分の1を使い切ってしまう)。ほかのユーザーへの露出時間を確保するため、『アテンション』を30秒に区切ることにした」。

ユーザーの注意は、ページ下部にある

ビューアビリティ基準の広告売買は、マーケターがメディアに投じた広告費に関する説明責任を求め始めた最近になり、主流になった。料金分の働きをしたいと考えるパブリッシャーならば、ビューアビリティ基準の広告取引を提供しようとするだろう。しかし、スリダー氏はビューアビリティはただのパズルの1ピースにすぎないと信じている。

ページ最上部にある広告は、概してもっとも「インビュー(画面に現れる)」のものと見なされる。そのため、「エコノミスト」のビューアビリティ保証キャンペーンは、すべての広告が最上部に現れるようにし、最適化に務めた。深い分析という編集面での特徴を生かし、もっとも読者をひきつけるコンテンツをページ下部に置くようにしている。こうすることによってCPHが効果的に働くはずだ。「ビューアビリティ、言い換えれば広告掲出の確実性は、ページ上部へ。ユーザーの注意は、ページ下部にある」とスリダー氏は話した。

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