沈む欧州経済、ギリシャはユーロ離脱も

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選挙の後、荒れた金融市場がスパイラル状に悪化せずに、比較的落ち着いているのは、10年春以降、危機が長期化する中で、市場参加者がすでにギリシャのユーロ離脱というリスクを織り込んできたからだとみられる。

勝ち組にも暗雲が漂う

フランス大統領選とギリシャの議会選挙で示された民意は緊縮財政への反発だった。「左翼の支持者も極右の支持者も、とにかく雇用と所得を何とかしてほしいと求めている」(ニッセイ基礎研究所・伊藤さゆり主任研究員)。

スペインでは、国が銀行4位のバンキアの親会社に注入した公的資金45億ユーロを株式に転換し、一部国有化すると決めた。ようやく、住宅バブルの処理、金融機関のバランスシートの調整が始まる。今後、信用収縮が進む中で、緊縮財政を強いられ、成長率は大幅に低下する。IMFの見通しでは、ユーロ圏17カ国の12年の実質成長率をマイナス0.3%成長としているが、現下の混乱は織り込んでいない。

勝ち組で南欧を支える側と思われていた国も次々に脱落している。昨年はドイツとフランスの経済格差が拡大したが、南欧経済圏が縮むことで、物流拠点であるオランダの経済がマイナス成長に転落する。ドイツも足元の景気はよくない。

ECBのドラギ総裁やフランスのオランド新大統領は、緊縮財政一本やりでは危機の打開は困難だとして、“成長戦略”を提案し、6月のEU首脳会談ではこれが議題となる。しかし、欧州経済全体の縮小は避けられない。社会の安定のためには、硬直化した労働市場をより公平な仕組みに改革することによる効率の改善、所得の分配の見直しによる格差是正が課題といえる。

(大崎明子 =週刊東洋経済2012年5月19日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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