もう1つがテープカッターだ。同じく4月25日付の日経MJに、「ニチバンのテープカッター、金属刃で切り口直線に、小型で持ち運びしやすく。」として同社の小型カッター「セロテープ直線美mini」が紹介されている。
「テープの切り口がきれいな直線になるように独自の金属刃を採用。持ち運びがしやすく、デスクの狭いスペースにも置けるデザイン」にしたとある。もちろん、刃に手が触れてもケガをしにくいよう工夫をした上でだ。「従来の小型のテープカッターは、ケガをしないようにプラスチックの刃を使った」ものが多かったが、その結果として、テープの切り口がギザギザになり、どうにも美しくないのが通常であった。消費者にとっては、もはや“アタリマエ”になっている潜在的なニーズギャップをこの製品は改善しているのである。
これは、「テープを切り取れる」というテープカッターの「中核」価値を支える、「どのように切り取れるのか」という「実体」価値の部分に目を向け、小さな工夫であるが、実は大きなメスを入れた結果の製品であると解釈できる。
■中核価値を根底から覆す-カラオケボックス
3つめは、「中核」価値に手を入れた例だ。
カラオケボックスの「中核」価値は「歌が歌える」ことである(そこに異論を唱える人は、まずいないだろう)。その中核価値を、「コンサート中継を見られる」ことに置き変えてしまったのが、第一興商のビッグエコーによる以下の取り組みである。
「第一興商は運営するカラオケ店『ビッグエコー』向けに歌謡コンサートを生中継で配信する。5月7~10日に浅草公会堂(東京・台東)で開催するコンサートを札幌や名古屋などの10店舗で配信。今後も配信する内容を検討し、カラオケ店の利用者拡大につなげる」(第一興商、カラオケ店向けに、歌謡コンサート生中継。 『日経MJ』2012年4月25日付)。
これはなかなか持って勇気のある決断といえるだろう。ナゼなら、「自分たちは何者であるのか」「どのような戦いの土俵で戦うのか」というドメインを拡張しているからである。
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