JWマリオット東京が高輪ゲートウェイシティにオープン。再解釈された日本文化は何を示すか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

だからこそ「(JWマリオット・ホテル東京は)東京の人々にもアピールし惹きつける場所にしないといけない」のだという。「海外の富裕層にとっては、ホテルが国際的で特別に感じられなければならず、同時に日本の本質を持っていなければならない」(プシェルバーグ)。

この複雑な要求に応えることこそが、次世代のラグジュアリーホテルの条件なのだ。

海外富裕層と日本人を同時に惹きつける

レストランフロア
まるで東京の摩天楼のビル群のようにそびえ立つ高い展示棚が、緩く空間を仕切るレストランフロア ©️Photography courtesy of Marriott

日系二世とは言え、日本人ではない彼らはそうした日本の本質をどう取り入れたのか?

彼らが参考にするのは、ファッションデザイナーのポール・スミスだ。ヤブによれば、スミスは何年も前に出版した著書で日本のそこかしこにインスピレーションが溢れていると語っており、日本への深い愛情を表現している。「実際、スミスのコアビジネスは常に一貫して日本なんです」と付け加える。

「リサーチも大切ですが、経験も同じくらい重要です。私たちは(ビジネス修士号のMBAに掛けて)『MBWA』を重視しています。MBWAとは、Masters of Business by Walking Around、つまり歩き回ってその土地をマスターすることです」とプシェルバーグは冗談まじりに答える。「周囲の情報を吸収、これが重要なのです」。

こうやってヤブとプシェルバーグの2人は、日本の色彩から伝統的な光の表現まで多くのものを吸収した。注意深く見るとホテルの内装のそこかしこにヤブ・プシェルバーグ的に再解釈された日本的要素が散りばめられている。

車での来館者が建物に入りエレベーターホールまで向かう道は薄暗くわざとくねくねと曲がっており、どこか茶室へと向かう小径を彷彿とさせる。

ロビーやバーの頭上では月をモチーフにした楕円形の照明がほのかに天井を灯す。

そこかしこの壁には障子やふすまからのインスピレーションなのか格子状のデザインが目立つ。

色彩もそうだ。「苔のような緑色など、日本には、独自の日本らしいと感じさせる色彩があります。韓国とも中国とも異なる色彩です」とプシェルバーグは説明する。「わび・さび——完璧な不完全さを作り出すという概念も日本的な原則です。こうした原則から仕事を進めることもできるし、歴史から仕事を進めることもできます」。

日本的インスピレーションは造形だけに留まらず表現方法にまで及んでいる。
例えば30階のロビーからレストランが並ぶ29階へと導く歪な曲線を描いた階段を降りる時の景色は、このホテル内でいちばんの開けた景色だろう。そこにはいくつもの高さ10mほどの展示棚がまるで高層ビルのようにそびえ立っており東京の摩天楼を彷彿とさせる。その展示棚いっぱいに日本を感じさせる陶磁器を飾ることで、この東京という街が伝統と未来が混在した街であることを思い出させる。

ちなみにこの階段の景色の正面には東京湾の景色が広がっているはずで、これまでの西洋的な価値観であれば、この向きにはできるだけ大きなガラス窓を用意して、その眺望をこれ見よがしに見せつけるところだが、そうはせずあえて壁を設けており、まるで竹垣の隙間から庭を覗くように「見えたり、見えなかったり」といったつくりになっている。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事