だからエイベックスの動画配信はつまずいた 屋台骨を支える事業で起きた「想定外」の事態

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結局、dTVの会員数は9月末で475万人と、3月末(468万人)から7万人の増加にとどまり、当初の想定に届かなかった。会員増による増収で費用の膨張を賄う算段だったが、2015年4〜9月期の連結売上高は686億円と、計画(778億円)を割り込む形で着地。費用の増加ばかりが重くのしかかった。

販売拠点が競合と提携

エイベックスが手掛けるもう1つの動画配信サービス「UULA」もネットフリックスの影響を受けている。

UULAはソフトバンクと共同で提供するサービスだ。dTVと同様、携帯電話販売店の店頭でスマートフォン契約を結ぶ際、客にサービスの契約欄にチェックを入れさせて契約の同意を得る、「レ点営業」と呼ばれる方法で会員を獲得してきた。

ところが、会員獲得の拠点であるソフトバンクがよりによって競合のネットフリックスと業務提携し、同社が日本で展開するサービスの契約・請求の窓口になった。

これによって9月以降、店頭でのUULA会員の新規獲得が進まず、6月末に136万人だった会員数は9月末時点で124万人まで減少。販路がほぼ絶たれた同サービスは、今後の戦略について社内で検討が進められている。

海外勢の影響を受けたのは動画配信だけではない。5月にサービスを始めた定額聴き放題の音楽配信サービス「AWA」も、無料期間終了後の有料会員への移行が進んでいない。

米アップル、米グーグルが相次ぎ日本の定額制音楽配信市場に参入したのに加え、「ユーチューブなどで無料で音楽を聴くのに慣れた若い世代に、有料サービスを浸透させるハードルは高い」(音楽業界関係者)ためだ。

動画と音楽。2つの事業で日本のエンターテインメント市場を牽引してきたエイベックスにとっても、外資上陸の荒波を乗り越えるのは容易ではなさそうだ。

「週刊東洋経済」2015年11月14日号<9日発売>「核心リポート05」を転載)

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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