トヨタ幹部「中国は2カ月で自動車業界全体を停止させることができる」、自動車業界にとって中国の影響力は最も厄介な問題の1つに

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10月21日、世界中の自動車メーカーが重要素材のレアアース(稀土類)を大慌てで探し回っている。写真はモナザイトの標本。14日、北京で撮影(2025年 ロイター/Maxim Shemetov)

世界中の自動車メーカーが重要素材のレアアース(稀土類)を大慌てで探し回っている。中国の輸出規制発動前に在庫を確保したいためだが、レアアース生産は中国が圧倒的なシェアを占めており、自動車メーカー幹部は部品不足や工場の操業停止が起きかねないと懸念している。

レアアース磁石は自動車のサイドミラー、スピーカー、オイルポンプ、ワイパー、燃料漏れ検知センサーやブレーキセンサーなどさまざまな部品のモーターに使われており、電気自動車(EV)ではさらに重要度が高い。

レアアースは米中合意により供給リスクが一時的に回避されたものの、今年初めに実施された同様の規制で在庫は払底した。中国政府は輸出ライセンスの取得を一段と厳格化。以来、中国による輸出規制が劇的に拡大し、メーカーは世界的なレアアース供給不足に直面している。

コンサルティング会社アリックス・パートナーズの推計によると、中国は世界のレアアース採掘の最大70%、精製能力の85%、レアアースの合金と磁石の生産の約90%を握る。中国の新たな輸出管理リストにはイッテルビウム、ホルミウム、ユウロピウムなど、自動車製造に使われる元素が含まれている。

ドイツの金属粉末供給会社NMDのナディーン・ライナー最高経営責任者(CEO)は「状況は非常に緊迫している。顧客は中国以外ならどこからでもレアアースを調達したいと考えている」と話す。

ライナー氏によると、スウェーデンなどの国には多くのレアアース資源が存在するが、鉱山や精製能力が整っていない。また、重稀土類レアアースに関しては中国が世界の精製能力の99.8%を支配し、他の供給源はほぼ存在しない。「当社はほぼ完売状態で、在庫も限られている」という。

レアアースは中古自動車からリサイクルすることも可能だが、この産業はまだ発展途上だ。

既に在庫が枯渇

中国の供給業者が11月8日の輸出管理実施前に新規注文を履行できたとしても、欧州への海上輸送には45日ほどかかり、自動車業界はレアアースの供給ボトルネックという難題に直面している。中国はまた、リチウムイオン電池や電池素材の輸出にも制限を設けており、EVの部品供給への懸念が高まっている。

さらに先週は中国とオランダの間で、オランダの半導体メーカー、ネクスペリアを巡る知的財産権紛争が発生。同社が自動車部品向けに大量の半導体を供給していることから、工場が操業停止に追い込まれるとの不安が高まった。自動車メーカーは米関税の影響という課題にも直面しているが、レアアースを通じて業界を支配する中国の影響力は最も厄介な問題の1つだ。

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