「サトシ・ナカモト」の文体に似ている…謎に包まれたビットコイン発明者を特定する手がかり

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ペネンバーグがブライに連絡を取ると、彼は「あなたを落胆させてしまうかもしれませんが、私はサトシではありません」と述べ、共同発明者たちのいずれもそうではないと「絶対に」言えると答えた。キングもペネンバーグに対し、この特許の焦点はビットコインとは全然違うし、ビットコインについては「この質問が出るまで」聞いたこともなかったといい、そしてビットコインについて調べた今では、それは「問題を探している解決策」のように思えると述べた。

ペネンバーグはキングの主張に説得力がないと考えた。そして自分が特定した候補者がナカモトであるとは断言しなかったものの、その状況証拠はデイビスの説よりも「ずっと説得力がある」と信じていた。私自身も彼に同意せざるを得ず、そしてペネンバーグの「フレーズをグーグル検索する」という手法を思いつかなかったことに歯がゆさを覚えた。

ナカモトの文体研究からナカモトらしい人物を特定

それから2年ほど、サトシ研究というこの新しい分野には大きな動きが見られなかった。ところが2013年12月1日、「LikeInAMirror(鏡の中のように)」という新しく開設されたブログに、「サトシ・ナカモトは(おそらく)ニック・サボだ」という記事が投稿される。筆者は「スカイ・グレイ」という偽名を名乗り、それはナカモトを意識してのことのようだった。

グレイはペネンバーグと同様、ホワイトペーパー(ナカモトが著したビットコインの基本的な仕組みを解説した技術論文)の中から珍しいフレーズを探してウェブ検索を行った。そして、たとえば「タイムスタンプ・サーバー」や「信頼できる第三者」といった語をきっかけに、ニックが書いたビットゴールドに関する一連の論文を見つけた。もちろん、ナカモトがニックの研究を読んで自然に似た表現になった可能性もある。そこでグレイは、「コンテンツに依(よ)らない文体上の特徴」にも注目した。

そこでも一致度は高かった。ホワイトペーパーの独特の言い回しが、ニック・サボの文章にも同様に見られる一方、暗号学の学術論文ではほとんど見当たらない例を、グレイはいくつか挙げた。たとえば、「of course という語句を、慣例的にはカンマを入れる部分でカンマを入れずに使う(the problem of course is のように)ことが繰り返されている」、「ニックのブログで can be characterized という表現が頻繁に使われている(暗号学の論文では1%ほどにしか見られない)」、「仮説の説明において for our purposes を用いる(暗号学の論文では1.5%ほどにしか見られない)」などである。

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