「サトシ・ナカモト」の文体に似ている…謎に包まれたビットコイン発明者を特定する手がかり

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ところがその人物、フィンランド人の仮想通貨研究者ヴィリ・レードンヴィルタにデイビスが「あなたがナカモトですか?」と尋ねると、彼も笑いながら「自分にはC++のスキルも暗号学の経験もない」と否定した。デイビスはその説明をもっともだと思い、再びクリアに「やっぱりあなたがナカモトではないのか?」と尋ねた。

すると今度は、「自分はサトシじゃない」と言い、さらに「もしそうだとしても言わないだろうね」と付け加えた。そしてクリアは、ビットコイナーの間で口癖になりつつあった主張を展開した──ナカモトの正体は大事ではない、と。それこそが分散型通貨の本質なのだ。明確なリーダーを持たないことが、その最大の特徴だった。デイビスの記事が発表されると、クリアは自分はナカモトではないと強く否定した。デイビスとのやり取りは「冗談半分」だったのだと弁解し、「他人の創造性と努力の結晶に、自分が少しでも関わったと見なされるのは耐えられない」と語った。

とんでもない偶然、奇妙な一致

一方その頃、ファスト・カンパニー誌の記者で、かつてスティーブン・グラス〔米国の有力な政治雑誌ニュー・ リパブリックの元記者で、1990年代に多くの記事を捏造していたことが発覚し、同誌から解雇されている〕の捏造を暴いたアダム・ペネンバーグは、ある興味深い一致に気づいていた。彼もまたナカモトの謎に引き込まれ、彼が書いた文章から特徴的なフレーズをいくつかグーグル検索していた。すると「逆算するのは計算上不可能(computationally impractical to reverse)」というフレーズを検索した際、興味深い結果が得られた。そのフレーズを含む安全な通信方法に関する特許出願が、ナカモトが bitcoin.org を登録する3日前の2008年8月15日になされていたのだ。「これはとんでもない偶然だ」とペネンバーグは書いた。

その特許には、3人の著者の名前が記載されていた。ミュンヘン在住のニール・キングとチャールズ・ブライ、それにニュージャージー在住のウラジミール・オクスマンである。ペネンバーグはほかにも奇妙な一致を見つけた。ブライは bitcoin.org がフィンランドのインターネット企業を通じて登録される6か月前に、フィンランドを訪問していたという。キングのフェイスブックページには反ウォール街的な投稿が多く、ペネンバーグが見るところ、キングがアマゾンに投稿したレビューはナカモトのフォーラムでの書き込みを彷彿とさせるものだった。キングは英国式のつづりを使っていなかったが、ペネンバーグはその時すでに、ナカモトのイギリス英語が「追跡者を混乱させるための偽装」だと考えるようになっていた。

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