「サトシ・ナカモト」の文体に似ている…謎に包まれたビットコイン発明者を特定する手がかり

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(写真:ブルームバーグ)
暗号通貨ビットコインを発明し、保有するビットコインの市場価値は日本円で約18兆円(2025年8月現在)とされる「サトシ・ナカモト」。運用開始から2年ほどで表舞台から姿を消したナカモトの素性は、いまも深い謎に包まれたままです。ナカモトに迫るべくさまざまなジャーナリストや研究者らがその正体を探ってきたにもかかわらず……。
15年もの歳月をかけてナカモトの正体を追い続けながら、近年、新たな視点からナカモト候補者を絞り込んでいったアメリカのジャーナリスト、ベンジャミン・ウォレス。ナカモトの正体の核心に迫るとともに、ナカモト・ミステリーの全体像を俯瞰した一冊と言える彼の著書『サトシ・ナカモトはだれだ? 世界を変えたビットコイン発明者の正体に迫る』(小林啓倫訳)より、一部抜粋のうえ紹介します。

サトシ・ナカモトはアイルランド人?

2011年後半に私の記事がワイアード誌に掲載される以前に、すでに2人のジャーナリストがサトシ・ナカモトの候補者を挙げていた。ニューヨーカー誌の記者ジョシュア・デイビスは、ナカモトは経験豊富な暗号学者であるという説を追求し、暗号分野の年次会議である「クリプト」がサンタバーバラで開催された際に、その会場に姿を現した。そこで彼は、マイケル・クリアという、長髪で23歳のアイルランド人参加者と知り合う。

クリアはいくつかの「ナカモトらしさ」を満たしていた。彼は暗号学を専門とする大学院生で、英国式のつづりを使い、用心深い性格で(大学の仲間と違って、トリニティ・カレッジのプロフィールページに写真や電話番号を載せていなかった)、P2P(ピアツーピア)ネットワークを研究しており、成績は優秀で(学部生時代にはコンピューター科学のクラスでトップの成績を収めていた)、為替取引ソフトウェアの開発に携わっていた。

講演が行われる建物の前の階段で、デイビスは重要な事実を聞き出す。クリアはビットコインのプログラミング言語であるC++を使えるのだ。だがデイビスが「あなたはナカモトですか?」と直接聞くと、クリアは笑って答えず、代わりに「ビットコインの設計をレビューしてあげてもいい」と申し出た。1週間後、クリアはデイビスにメールを送り、「ナカモトが誰かを特定できると思う」と言ってきた。クリア自身もサトシとは誰かという謎に魅了されたらしく、「匿名でいようと一生懸命に努力をしている人物の情報を公表するのはフェアじゃない」と述べつつも、「著者のプロフィールに多くの点で合致する人物がいる」としてその名前を提示したのだ。

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