「影のアメリカ大統領」とも呼ばれるピーター・ティールが示す《ビットコインの本当の敵》の正体
広々とした会場が大歓声に包まれた。しかしこのスピーチが行われた頃、ティールの投資会社が8年にわたって保有していた大量のビットコインを売却していたことが、のちに明らかになっている。
マイアミでのスピーチを締めくくるにあたり、ティールは聴衆に向かって、彼が「敵」と呼んだものは「国家の延長線上にある」と語った。それとは対照的に、ビットコインは企業ではなく、取締役会も存在しない。「サトシが誰なのか、私たちは誰も知らないんだ」と、ティールは強調した。
ビットコイン最大の保有者
私は、同じくベンチャーキャピタリストである友人のアンディと会場を出た。
「あれは狂気だな」と、アンディは首を振りながら言う。
サトシが誰なのか、私たちは誰も知らない。2011年当時、サトシは実験的な通貨を開発した無名のプログラマーであり、それを面白がるのはごく一部のコミュニティに限られていた。それから10年、いまや彼は時価総額1兆ドルのプロジェクトを生み出した伝説的な創始者であり、ビットコインは世界で9番目の資産価値を持つようになった(テスラの少し下で、メタすなわち旧フェイスブックの上に位置している。それほどの大きな転換を成し遂げたにもかかわらず、サトシが匿名を保ち続けたこと自体が、最大の偉業の1つになっていた。そして彼は、莫大な富を築いている。
セルジオ・デミアン・ラーナーというコンピューター科学者が、初期のブロックチェーンを巧みに分析し、約110万BTCが同じマシン、つまりサトシのマシンによってマイニングされたと推定した。当時、これらのコインの価値は400億ドルに達していた。サトシはビットコインの最大の保有者であり、その価格に大きな影響を与えうる存在だったのである。
2021年春、暗号通貨取引所コインベースが上場したことで、その市場価値は一気に860億ドルにまで達した。しかしコインベースがSEC(米国証券取引委員会)に提出した目論見書には、「サトシ・ナカモトが公に身元を明かしたり、大量のビットコインを動かしたりする」ことがリスク要因として明記されていた。ナカモトとは何者なのか、つまりどのような動機や意図を持っているのかが重要になるシナリオを想像するのは難しくない。ティール自身は、2000年にアンギラ島で開催された金融暗号会議に出席していたメンバーの中に、ナカモトがいたのではないかと推測したことがある。
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