「影のアメリカ大統領」とも呼ばれるピーター・ティールが示す《ビットコインの本当の敵》の正体

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ティールがステージに登場する前、1999年に撮影された映像が流された。そこには、より若く痩せたティールが、オンライン・マネーの未来を熱く語る姿が映っていた。彼は、5年以内に中間層のすべての人々がインターネット対応の携帯電話を持つようになり、そうなれば中国やインドのような国々は通信ネットワークをシャットダウンするか、通貨主権を手放すかのどちらかを迫られるだろうと予測していた。

ビットコイン VS. イーサリアム

やがて、白いポロシャツを着たティールが舞台袖から姿を見せると、彼は百ドル札の束を客席の最前列のほうへと放った。「まだこんなものが通用しているなんて、ちょっとおかしいと思わないか?」と会場に問いかける。今や時価総額が8130億ドルに達しているビットコインが、なぜ12兆ドル規模の金(ゴールド)に取って代わっていないのか。そしてビットコインは、法定通貨の時代は終わりだという警鐘を鳴らしていると述べた。

彼は「BTC vs. ETH」と書かれたスライドを投影した。イーサリアム(ETH)は時価総額が2番目に大きな暗号通貨だ。スライドの「BTC」の上には、機関銃をこちらに向ける人物の写真が、「ETH」の上にはイーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリンが紫色のズボンを穿き、ぎこちない姿をしている写真がそれぞれ配置されていた。

ティールによれば、ビットコインがいかに技術的な革新性や優位性を持っているとしても、それは政治運動であり、立ちはだかるものは「この運動の敵」だという。「そこで最後に、敵のリストを示したいと思う。ビットコインを妨害していると思われる人々のリストだ」と彼は述べた。「彼らを明るみに出したい」のだという。そしてスライドに映し出された「敵その1」はウォーレン・バフェットだった。私はバフェットが堅実な投資戦略で有名なこと、コントラクト・ブリッジというトランプゲームにはまっていること、資産の全額を寄付すると誓っていることは知っていた。しかし、どうやらビットコイン界隈では、バフェットには「暗黒面」があるらしい。ティールは彼を「オマハの反社会的なおじいちゃん」と呼んだ(バフェットの罪状は、ビットコインを「ネズミ駆除剤」と評したことだった。

敵その2はJPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモンで、ティールいわく「ニューヨークの銀行家特有の偏見」を体現している存在だった(ダイモンは「ビットコインは無価値」と酷評するという過ちを犯していた。敵その3はブラックロックCEOのラリー・フィンクだった(彼のビットコインに対する罪が何なのかは、すぐにはわからなかった)。この3人こそ、54歳のティールが「ジェロントクラシー(老人支配)」と呼ぶ存在だった。ティールは、古い世代を象徴する彼らの写真と、繁栄するマイアミや「革命的な若い世代のムーブメント」の写真を対比し、「このカンファレンスから世界を奪取しにいくんだ!」と呼びかけた。

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