ファナック、リンゴだけじゃない再成長の芽 試される「脱・アップル銘柄」への長期戦略

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稲葉社長は「特需が一部で復活する動きがある」と明言した

足元では、底打ちの兆しも出ている。10月28日に開かれた決算説明会で、稲葉社長は「スマホの特需が一部で復活する動きがある」と明言。

ボリュームはまだ過去の受注規模に至っておらず、案件についても具体的な説明をすることはなかったが、2016年に発売されるとみられるiPhone新型機向けの受注ではないか、との噂が市場で広がっている。

それでも、ファナックは今期業績の見通しについて、営業利益で2184億円(前期比46.7%減)とわずかな額を上方修正するだけにとどめた。世界シェア5割といわれる工作機械用のNC(数値制御)装置とサーボモーターを展開する主力のFA事業部門が、中国経済の減速の影響を受けて落ち込んでいるからだ。失速は台湾や韓国向けにも波及しており、スマホ向けの特需を打ち消す結果となった。

唯一気を吐くロボット事業

厳しい状況が続いている中で、唯一好調が続いているのがロボット事業だ。同部門の売上高は2010年度の779億円から、2014年度は1819億円へと着実に伸長。2015年度も4~9月累計で923億円と、前年同期比で24%増となっている。主力の米国・欧州向けが好調なうえに、中国などアジア向けでも活発な需要が続いており、「四半期ベースで過去最高を記録するなど絶好調」(稲葉社長)だ。

ロボドリルなどのロボマシン事業は、スマホの新製品の動向に影響を受けやすい。FA事業も設備投資の動き次第で、景気動向に左右される。そうした中で、工場の自動化需要は景気の動きとは関係なく、今後も拡大するとみられている。世界最先端の産業ロボットを生産するファナックにとっては当然追い風だ。

将来への布石も打っている。同社のロボットの生産能力は月間5000台。業界でも類を見ない生産能力を持っているが、現在の生産台数は月産4000台とかなり逼迫した水準に達している。そのため、「ロボットの新たな生産設備の検討も視野」(稲葉社長)に入れているという。

2016年4月の完成を目指して栃木県壬生町で建設している工場はFA事業向けだが、まだ用地が残っており、ロボット生産工場を建設する可能性はある。本社周辺などに建設する選択肢もあるだろう。

技術面では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)に力を入れる。9月には、機械が自ら学習・最適動作を見つける機械学習や深層学習(ディープラーニング)の開発で最先端の技術を持つベンチャー企業、プリファード・ネットワークスに出資し、発行済み株式の6%を取得。「ロボットや工作機械の知能化は進む。AIについて全力で取り組んでいく」(稲葉社長)方針だ。

5月に実施した東洋経済のインタビューで「自動化・ロボット化で自由に使える時間が確保できる。それを使って人生を楽しんでいただけたなら」と理想を語っていた稲葉社長。ロボット事業の成長には、社長の夢の実現だけでなく、ファナックが次のステージに飛躍できるかが懸かっている。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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