ちょんまげ→散切り頭で大混乱 朝ドラ『ばけばけ』変な髪型の武士が続出!文明開化の裏側
もう一つ、政府にとって誤算だったのが、男性にならって、髪を切り出した女性たちがいたことだ。当時はまだ「女性の髪は長くあるべし」という風潮が強く、明治5年3月の『新聞雑誌』には、次のような記事が掲載された。
「近頃、府下にて往々女子の断髪する者あり。固より我古俗にもあらず、また西洋文化の諸国にも未だ曽て見ざることにして、その醜態陋風見るに忍びず」
随分と酷い書かれようだが、明治5年4月5日には、女子の断髪禁止令が東京府から出された。このことから、4月5日は「ヘアカットの日」に制定されている。
「髪を切ってもよい」と言ったり、「女性はやっぱり切るな」と言ったり、明治政府の迷走ぶりが見て取れる。
明治の武士のリアルな困惑を描いている「ばけばけ」
「ばけばけ」では、父と祖父の「髷」のせいで縁談がダメになったトキのもとに、2度目のお見合いのチャンスが訪れる。
実はその前にトキは、堤真一演じる仲人の雨清水傳と、北川景子演じるその妻のタエから「婿を取るのではなく、嫁入りしてはどうか」とすすめられていた。確かに、髷にこだわる父と祖父がいるような家に、婿入りしたいと思う男性はまれだろう。
しかし、トキは嫁入りではなく、あくまでも婿をとることにこだわった。こう言って固辞している。
「私ひとりだけ幸せになってもつまらんと申しますか、幸せでないと申しますか。みんなで幸せになって、初めて幸せなので」
このセリフを密かに聞いていた父・司之介。自分のせいだと反省したようだ。2回目のお見合いでは、なんと司之介は髷を落として登場。SNSでは「落ち武者」がトレンドワード入りするなど、大盛り上がりとなった。
しかし、明治初期の世相をみてみれば、あながちフィクションとも言えなさそうだ。明治初期の武士たちの悪戦苦闘ぶりを面白おかしく、かつ、リアルに描いている「ばけばけ」。これからの展開も楽しみだ。
【参考文献】
刑部芳則著『洋服・散髪・脱刀 服制の明治維新』(講談社選書メチエ)
瀧井一博著『文明史のなかの明治憲法』 (講談社選書メチエ)
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)
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