"星野リゾート"と全く異なる戦略で大成功の温泉旅館!社長が語る"非効率"貫く経営の勝算とは

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現在、旅館業界の中で多くの注目を集めているのが星野リゾートです。倒産の危機にあった大型旅館の再生を次々と成功させ、宿を蘇らせてきました。その実績は業界に大きな影響を与え、「旅館」という存在を社会に再び強く印象づけるきっかけにもなりました。旅館業界が星野リゾートにどれだけ助けられたか計り知れないものがあるのは事実です。

しかし一方で、その効率的で均質化された運営スタイルは多店舗展開に適していますが、旅館本来の「個別性」や「唯一性」を犠牲にしてしまうのです。

旅館は本来、一人のオーナーが自らの思想やこだわりを色濃く反映させて運営するものです。2軒、3軒までなら個性を維持しながら多店舗運営ができますが、全国的にチェーン展開するとなれば、どうしても本部管理と数値化に基づいた効率経営に傾かざるを得ません。結果として「旅館らしさ」は失われ、ホテルに近い仕組みになってしまうのです。

効率化がもたらす「泊食分離」という行きすぎた形

効率化の流れが加速すると、やがて「泊食分離」という形に行き着きます。つまり素泊まりという、宿泊だけを提供して食事は提供しないという形態です。確かに人件費を削減でき、経営の合理性は高まります。しかし、それでは旅館文化の根幹の一つである“料理の個性”が消えてしまいます。

旅館の魅力は、料理・部屋・サービスが一体となった体験にあります。地域の食材を活かした料理、旅館ごとに異なる部屋のしつらえ、仲居による心配り。これらが一つとなって旅の思い出を形作っているのです。そこから食事を切り離してしまえば、旅館は単なる「宿泊の箱」になってしまい、やがては資本力のある大手ホテルに負けて、消失してしまうのは時間の問題です。

これから旅館が生き残っていくためには、ホテルとの差異を明確に打ち出し続ける必要があります。ホテル的な運営を模倣しては、「旅館」というカテゴリーの存在意義自体が失われかねないのです。

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