アップルCEOがポケモンやバンダイナムコ訪れソニーやTDKと横浜で会談したスケジュールから日本のコンテンツと部品技術と市場を重視する理由が見えた

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AGCが作っているのは、iPhoneカメラのIRカットフィルター。このフィルターがないと、カメラのセンサーは赤外線にも反応してしまうのだが、赤外線をきれいにカットしつつ、可視光にまったく影響を与えないAGCのIRカットフィルターがあるから、iPhoneのカメラの自然なカラーバランスは実現しているのだ。ガラスという無機物を扱うと同時に化学・バイオ関連部門も持つAGCだからこそ、実現できる性能なのだそうだ。

多くの電気製品の製造に関しては、1990年代以降、韓国、中国の後塵を拝するようになった日本だが、高い光学技術とメカ設計が不可欠なカメラ市場だけは今でも日本が圧倒している。キヤノン、ソニー、ニコンとレンズ交換式のデジタルカメラ市場のトップ3を日本が独占していることからも、それはよく分かる。その日本のカメラ技術をiPhoneに活かすためにApple YTCは存在するのだ。

「日本のみなさんと仕事をするのは、素晴らしい。決して現状に満足せず『もっとできるはずだ』『次は何に挑戦しよう』という姿勢は日本とアップルの共通点です」と、ティム・クックCEOは語る。高度な部品技術、カメラ産業として、妥協せずに高度な部品を開発する姿勢は、日本の強力な武器だといえるだろう。

市場としてもまだまだ充分に魅力的

市場としても、まだまだ日本は重要だと捉えられているようだ。ティム・クックCEOの今回の訪日における重要な行事のひとつは、Apple 銀座のリニューアルオープンを祝うことだった。現在アメリカ以外に約260店舗が展開しているApple Storeの最初の1歩がこのApple 銀座だった。2003年のオープン時には、盟友である故スティーブ・ジョブズがオープンの挨拶に来日したのだから、ティム・クックCEOにとっても感慨深いものがあったのではないかと思われる。

同時に今年7月26日にオープンしたApple 梅田も視察した。また、第1期GIGAスクール構想の際にはWindowsタブレットを導入したが、第2期ではiPadに切り替えて約9万5000台を導入した京都市の、小学校のうちの一校を訪れた。

Apple銀座リニューアルオープン
Apple 銀座リニューアルオープンのドアを開け、前夜から並んでいたアップルファンのセルフィーに応じるティム・クックCEO(写真:筆者撮影)

つまり、購買力は一時より衰えたとはいえ、日本はまだ充分に大きな市場で、その消費者も充分に大切だと思っているということなのだろう。

また、到着翌日の最初のスケジュールは、スーツを纏って『霞が関詣で』だった。岸田元首相と林芳正官房長官、平将明デジタル大臣と会っている。どちらもXの投稿ではマイナンバーカードの話をしているが、アップルとして目下の関心事は個人情報保護の仕組みを破壊する可能性のあるスマホ新法。運用次第では、アップルはiPhoneの個人情報がMetaやGoogleに漏洩しないようにするために、日本でローンチする機能を制限せざるをえなくなるかもしれない。そうなると困るのは我々消費者だ。その件に関して申し入れがあったであろうことは、想像に難くない。

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