アップルCEOがポケモンやバンダイナムコ訪れソニーやTDKと横浜で会談したスケジュールから日本のコンテンツと部品技術と市場を重視する理由が見えた
ポケモン、ドラゴンボール、怪獣8号など、アニメやゲームにおいては、はやり日本は他に大きく差をつける『コンテンツ大国』で、アップルにとっても、そこは見逃せないポイントなのである。
iPhoneのカメラは日本なくしては完成しない
次に重要なポイントが、ティム・クックCEOがメディア初公開のApple YTC(横浜テクニカルセンター)で会った人々だ。
そもそもApple YTCは、故安倍元首相の誘致が実って作られた施設。横浜市港北区綱島に存在しており、外から見る限りでは、Apple ParkやApple Storeのように床から天井までの全面ガラスと、金属、そして木材で作られたアップルらしい設備。しかし、その中で何が行われているのかは、我々メディアにも一切明かされてこなかった。
今回、我々に解説されたその役割は、アップル本社製品開発部門の出先機関ということである。iPhone、iPad、Apple Watch、Macなどのアップル製品の部品を作っている企業は、実は日本に1000近く存在する。特にカメラ回りの技術においては、日本は他国にない技術を数多く持っており、iPhoneのカメラ回りの開発は、ほぼこのApple YTCで行っていると言ってもいいほどだという。

このカメラの光学部分の部品を、日本のサプライヤーと共同で開発し、性能試験・強度試験などを一緒に行っているのがこのApple YTCというわけだ。日本の各サプライヤーの窓口になっており、独自技術を持っている中小企業にとっても、カリフォルニアのアップル本社まで出向かなくても、横浜で、しかも日本語でプレゼンテーションを行えるというメリットは大きい。
今回、ティム・クックCEOにプレゼンテーションを行ったのはTDK、AGC、京セラ、ソニーセミコンダクタソリューションズの4社。
この中で一番知られているのはソニーセミコンダクタソリューションズだろう。熊本県や長崎県に工場を持ち、現在使われているiPhoneのカメラのCMOSイメージセンサーをすべて生産している。前回、3年前にティム・クックCEOが日本を訪れた際には、同社の熊本のセンサー工場を視察している。このセンサーがなければiPhoneカメラの性能は実現不可能という心臓部だ。iPhone 17シリーズ、iPhone Airでも、超広角、メイン、望遠、そしてディスプレイ側の18MPセンターフレームカメラのすべてのセンサーを同社が生産している。35mmフルサイズの巨大なセンサーを持つαシリーズを擁するソニーの技術がここに活きているのである。
京セラは、そのセンサーを含めたカメラユニットがマウントされる基板を生産している。電気を通さないセラミックの基板は、十数層の積層構造になっており、その中を複雑に配線が通っている。これもまた、戦後、京都の地でセラミックスを活かした絶縁部品を作り続けた京セラしか作れない部品だ。
同じくTDKは磁性化技術で、iPhoneカメラのほんのわずかなAFのレンズの動きを制御する技術を提供している。iPhone 17シリーズのカメラのAFが速いと感じた人は多いと思うが、あの速さはTDKのTMRセンサー(トンネル磁気抵抗センサー)が実現しているのだ。
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