「結婚しないなんて親に申し訳なくないの」なども。中国で親の《催婚》が日本とは桁違いに"重い意味"を持つワケ。「結婚させたい親」の実態に迫る

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2024年、中国で結婚したカップルの数は約610万6000組だった。2023年の768万組から約20.5%の減少となり、統計が開始された1986年以降で過去最低の件数だ。2013年のピーク(約1347万組)と比べると、半分以下にまで落ち込んでいる。

背景には、都市部の生活費の高騰という現実の厳しさがある。住宅価格や教育費の重さが若者の結婚意欲を削いでいるのだ。

キャリアを優先する価値観が広がり、特に女性の社会進出によって、結婚を「人生の必須条件」としない風潮が強まっている。独身を選ぶなど、多様なライフスタイルの浸透も拍車をかけている。

中国では今も「結婚するなら新しい家が必要」という価値観が根強い。とりわけ男性は「新居と新車とゴールドジュエリーを用意すること」が結婚の前提条件とみなされている。

あえて言えば、結婚は「散財」に等しい。これも若者が結婚をためらう理由の1つだ。

「催婚」するのは親だけでなく、政府も

今、「催婚」するのは親だけではない。政府もまた、若者に結婚と出産を促そうとしている。少子化と人口減少への危機感が背景にあり、政策と風習の両面から「結婚支援」が進められている。

2025年5月10日からは、婚姻登記の「省をまたぐ手続き」が全国で可能になった。これにより、結婚のために戸籍地へ戻る必要がなくなり、身分証と「未婚の誓約書」だけで手続きが完了する。さらに一部地域では、新婚夫婦への現金支給や消費補助、記念品の贈呈など、多様な支援策も打ち出されている。

中国の結婚式
中国の結婚式の様子(写真:取材協力者提供)

政府主導で、結婚にまつわる慣習の見直しが進められている。10万〜40万元(約200万〜800万円)に及ぶ高額な結納金などの旧習を改め、簡素な結婚式を奨励する「婚俗改革」だ。

しかし、その効果はまだ目に見えるほどではない。結婚となると、派手さが重要だというのは、親たちの共通認識らしい。

親と政府の双方が「催婚」する時代。若者たちは、個人の生き方と社会的な責務の狭間で揺れ動いている。残念ながら、中国の少子化はさらに深刻さを増していくだろう。

【もっと読む】中国で実家を出ず"親から給料を貰う"《専業子供》が流行る"深刻な事情"。親から家事の報酬で"月8万円"得る「33歳女性」などにリアルを聞いた では、ジャーナリストの黄文葦氏が、中国国内で注目されている「専業子供」について詳細に解説している。
黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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