「なぜ手伝う側ではなく、食べる側なのか」「子ども食堂をやめたくなりました」などの声も…子ども食堂の「政治利用」に潜む"真の危機"

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例えば、朝食を食べるか食べないかが、学力格差、体力格差につながることを示すデータがある。文部科学省の調査では、朝食を毎日食べている小・中学生と、まったく食べていない小・中学生の間には、各教科の平均正答率の差が15ポイント前後あることがわかっている(令和5(2023)年度「全国学力・学習状況調査」)。

また、スポーツ庁の調査によれば、毎日朝食を食べる子どもほど、体力合計点が高い傾向にあることが示されている(令和5(2023)年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」)。食事の回数が少なく、栄養が偏っていれば、同様の影響が生じることは論をまたない。

経済格差は「栄養格差」「健康格差」をも招く

そうすると何が起こるかは明らかだ。物価高による欠食や栄養不足により、子どもたちの心身に多大な悪影響が及ぶことが考えられる。朝食を抜く若年層は、朝食を習慣的に取っている人と比べて、うつの症状があると報告することが多いという研究結果もある(Breakfast skipping and depressive symptoms in an epidemiological youth sample in Hong Kong: the mediating role of reduced attentional control/2025年5月22日/Frontiers in Psychiatry)。

食生活はメンタルヘルス不調にも密接に関連しているのだ。つまり、物価上昇に伴う経済格差が大きくなれば、収入が低い世帯ほど子どもの成長が遅れ、学業や運動能力に支障を来し、心も不安定になる可能性が高いといえる。これは想像以上に恐ろしい事態である。

犠牲になるのは子どもたちだけではない。今年7月に経済的に困難な状態にある子育て家庭を対象としたNPОの調査で、米が十分食べられないときの工夫で「パンやうどんで代替する」が81.3%と最多だった一方で、「保護者が食べる米の量を減らす」も73.9%と2番目に多かった(経済的に困難な子育て世帯の子ども1.4 万人の食と生活の実態調査報告書-2025 年「子どもの食 応援ボックス」申込者7,856 世帯対象-/2025年7月/公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)。

この物価高で、現役世代から「これを機に1日2食にした」という話をよく聞くようになった。前述の調査結果と同じく、子どもにパンやパスタを多めに与えて食費を抑えているといった話もたびたび耳にする。血糖値を上げて満腹感を出す苦肉の策なのだろう。

ただ、その場合、糖質に偏った食事になるため、食後の血糖値の急上昇とその後の急降下がイライラや不安感などを誘発する可能性が出てくる。糖尿病の予備軍にもなりかねない。

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