「なぜ手伝う側ではなく、食べる側なのか」「子ども食堂をやめたくなりました」などの声も…子ども食堂の「政治利用」に潜む"真の危機"

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さらに火に油を注いだのは、自民党の鈴木貴子衆議院議員が火消しを狙ってか、「皆さん、食べに行ってもいいんですよ。居場所としての存在意義も、昨今ますます注目されていますし。決して貧困世帯向けとかではありません」などとXに投稿したことだった。

物価高騰にあえぐ中で、子ども食堂のお陰でなんとかしのいでいる家庭も少なくないだろう。物価高が止まる気配はない。帝国データバンクによると、2025年10月の飲食料品値上げは、合計3024品目となり、半年ぶり値上げラッシュになったとしている。食品分野別では、焼酎やリキュール、日本酒などアルコール飲料を中心とした「酒類・飲料」が最も多く、2262品目。2025年通年では、12月までの公表分で累計2万381品目になったという。

価格が少しでも安いディスカウントストアやスーパーのタイムセールなどを利用しても、空前の物価上昇の前では焼け石に水で、育ち盛りの子どもがいればなおさらである。認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調べによれば、全国の子ども食堂は1万866カ所に達したという(2024年12月現在)。前年度より1734箇所増加しており、5年前の2019年度の3718カ所から3倍近くになっている。

格差社会の深刻化を放置…人々の与党へのいらだち

子ども食堂の目的は、単に貧困問題の解消だけではなく、コミュニティの衰退による地域の人間関係の希薄化、子どもをはじめとした多様な世代の孤独・孤立を防ぐ「居場所づくり」がある。

とはいえ、格差社会の深刻化がその背景にあることは疑いようがない。先の鈴木氏の投稿に「政治家がそれを言うか」といった類の声が上がったのは、このような支援の輪が拡大し続ける状況を放置していた与党に対するフラストレーションの表れであったといえる。

実際、政治家の反応は総じて鈍い。先の茂木氏のパフォーマンスが典型だが、都内のスーパーを視察し、自ら買い物をする姿を披露したものの、その言動が逆に普段から買い物をせず、野菜の価格に疎いことが露呈した。本当に庶民感覚がわからないのだろう。

食事の話は、家計負担の観点から話題になりがちだが、中長期的にはもっと厄介な問題を引き起こす可能性が高い。それは栄養・健康面への影響である。一般的に、偏った食生活は、身体形成や心理傾向などに直結するものだ。子どもなら学力や発育状況、高齢者なら持病やフレイル(加齢などにより心身が老い衰えること)などに反映されることは容易に想像できる。

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