「生き方を変えてしまうことも」子を無意識に縛る"呪いの言葉"ー 「お母さん、本当は医者になりたかった」「私も走るのは得意じゃなかった」

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「でも、私とあなたは別の人間だし、体のつくりだって違うよ。お父さんは私より速いし、努力すれば速くなる可能性だって十分あるよ」と。

子どもは、まるでスポンジのように親の言葉を吸収します。そしてときに、その言葉に生き方まで縛られてしまうことがあるのです。だからこそ、親の言葉には慎重さが求められます。

反抗期でどんなに憎まれ口をきいていたとしても、子どもは親のことが大好きです。だからこそ、親の言葉や願いを無意識に「自分への期待」と受け取り、知らず知らずのうちに重い荷物として背負ってしまうことがあります。

何気ない一言が「呪い」になるとき

ある中学校での親子面談でのことです。母親がふと、「お母さん、本当は医者になりたかったんだ」と、自分の子どもの頃の夢を語ったところ、生徒はその言葉を「自分が代わりに叶えなければならない夢」と受け取ってしまいました。本当は別の夢を抱いていたにもかかわらず、「医者にならなければ」と思い込み、その夢に向かって進もうとしたのです。

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母親には、子どもに夢を託すつもりなどまったくなかったそうです。それでも、子どもは子どもなりに親の思いを敏感に受け取り、自分を縛ってしまったのです。

こうした「言葉の呪縛」から子どもを守るには、どうすればいいのでしょうか。

大切なのは、親が一方的に伝えるのではなく、常に「対話」を意識することです。親の思いを伝えるだけでなく、子どもの思いに耳を傾け、言葉のキャッチボールをすることが大切です。

たとえば、「お母さんはあなたくらいの頃、医者になるのが夢だった。あなたはいま、なりたい職業ってある?」などと問いかければ、子どもは「自分の思いを尊重してもらえている」と感じ、選ぶのは自分自身なのだ、という潜在的な安心感が芽生えます。

それでも、子どもが「私もお母さんみたいに○○を目指そうかな」と言っていたら、親の思いに引っ張られていないか、さりげなく対話を続けてみましょう。

たとえば、「お母さんは○○に憧れていたけど、お父さんは学校の先生になりたかったらしいよ。あなたは、いまどんな夢がある?」「あなたは、あなた自身の夢を見つけてね」などと伝えるだけで、プレッシャーをやわらげることができます。

子どもにとって、親はもっとも身近な大人であり、もっとも影響の大きい存在です。だからこそときにその影響が大きすぎて、子どもの可能性を狭めてしまうこともあります。

けれど、世の中にはさまざまな価値観を持つ大人がいます。親はその1人にすぎません。

広い世界の中で、子どもが自分自身の考えを尊重して歩んでいけるように。

親として、子どもを縛らずに見守る姿勢を、対話の中で大切にしていきたいものです。

普川 くみ子 公認心理師・臨床心理士

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ふかわ くみこ / Kumiko Fukawa

1994年の学校導入期から第一線に立ち続けるSC。30年間で、小中高のべ30校・3万人以上の生徒・保護者・家族と向き合い続けてきた。不登校から自殺未遂まで、ケースを問わず救うカウンセリング手法により、担当する不登校児童の復学率は8割を超える。20年来共に生徒支援をしてきた学校改革のカリスマ・工藤勇一氏から「日本一のスクールカウンセラー」と絶大な信頼を得ている。

カウンセリング以外にも、親・教員・警察・医師・児童相談所等と連携した新しい生徒救済システム作りに携わるなど、いま学校教育界で最も注目されているSC。横浜創英のほか、岡田武史氏が学園長を務める愛媛・FC今治高等学校、教育界の風雲児・神野元基氏が校長を務める大分・東明館中高等学校のSCも務める。

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