台湾の歴史認識と日本の保守界隈との親和性。「心地よい幻想」で成り立つ日本と台湾の関係は危うい
多くの台湾人が日本に好意的な感情を持っているのは確かだ。しかし、今後の日台関係を「親日」という言葉だけに頼って語るのはあまりに単純だろう。
日本と台湾にある「心地よい幻想」
日本の右派が自らの歴史観の肯定のため、あるいは「反中」の文脈で台湾との友好をと考えることは多い。一方で、左派が台湾を知ろうとする努力もないまま、自ら堅持してきた「護憲」「反戦」の価値観をそのまま台湾に当てはめて、台湾の「自己決定権」や中国の軍事的威嚇に対抗するための防衛努力を「好戦的」と批判するのも、現実の台湾を正しく映さない。
台湾側にも課題はある。これまで日本で台湾を熱心に応援してきたのは、主に保守右派層だった。日本は長らく自民党が政権を握ってきたため、「自民党とだけ付き合っていれば十分」という認識が台湾側にあったのかもしれない。
だが近年、日本では「外国人排除」的な空気が広がりつつあり、それが主に中国人への反感と結び付く形で語られることもある。台湾の一部には、その雰囲気を歓迎する声もあるが、一般の日本人が台湾人と中国人を明確に区別できるとは限らず、在日台湾人に危害が及ぶ恐れもある。
台湾では日本の右派論客による都合のよい言説だけが「日本の本音」として伝わり、実際の日本社会の多様な台湾への眼差しとかけ離れていくことも懸念される。日台双方がそうした“心地よい幻想”に安住すれば、相互理解は遠のいてしまう。
必要なのは、互いが相手を知ろうと努め、交流の機会を増やし率直に語り合うことだ。戦後80年という節目は、台湾と日本が「過去」だけでなく「未来」の関係をどう築くのかを私たちに問いかけている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら