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《ニュースの言葉を分かりやすく解説》ノーベル賞で注目「制御性T細胞」の知られざる凄み

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  • 中尾 篤典 岡山大学学術研究院医歯薬学域 救命救急・災害医学講座 主任教授
  • 毛内 拡 お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教

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「制御性T細胞」を発見した坂口志文氏のノーベル生理学・医学賞受賞が決定しました(画像:tepp/PIXTA)
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10月6日、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、制御性T細胞を発見した坂口志文・大阪大学栄誉教授ら日米3氏にノーベル生理学・医学賞を贈ると発表しました。坂口氏は過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」という細胞を発見しました。今後、自己免疫疾患やがんの治療などにつながることが期待されるそうです。
ここで出てくる「制御性T細胞」とはいったいどんな役割を担っているのでしょうか。中尾篤典氏・毛内拡氏の著書『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』から一部抜粋・再構成のうえ、お届けします。

免疫にも学校がある

免疫のシステムについてもう少し詳しく学んでみましょう。

私たちの免疫のシステムは極めて優れており、病原体となる細菌やウイルスから体を防衛し、悪性腫瘍に発展する可能性がある異常細胞を検知して除去します。

この素晴らしい機能が働くためには、実働する兵隊である免疫細胞たちが、味方と敵を区別する必要があります。敵・味方の識別ができない場合、免疫細胞の持つ高い攻撃力は自分の体に向かってしまいます。そのため私たちの体には、免疫細胞(特に司令塔となるT細胞)たちが敵味方の違いを学ぶための「学校」が必要になるのです。

(『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』より)

これまで、胸骨の後ろにある「胸腺」と呼ばれる小さな臓器が、T細胞たちの「学校」となっていることが知られていました。生まれたばかりのT細胞はまず胸腺に送られ、そこで自分の体を攻撃しないように教え込まれるのですが、一体どのようにT細胞に教育が行われているのか、詳しい仕組みは古くからの謎でした。

最近の研究で、胸腺の学校では、「これには反応してはいけない」ということを具体的に教えるために、敵の特徴を持ったダミーを使っていることがわかりました。(※)

※ Michelson DA, et al. Thymic epithelial cells co-opt lineage-defining transcription factors to eliminate autoreactive T cells. Cell. 2022;185(14):2542-2558.e18.

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【今回の発見は免疫システムの根本に関わるもの】

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