この保険は、「入院1日につき一定額が支払われる」一般的な医療保険とは違います。保険業界では通称「ストップ・ロス」保険と呼ばれています。預金残高を上回る大きな医療費支払を保障することを目的とする保険なので、免責額の高い保険です。そのため、一般の医療保険と比べると保険料はかなり安くなります。このように、少額の治療費は「医療費専用預金」から、高額な治療費は「ストップ・ロス」保険から支払われます。
この商品は銀行預金がベースの商品なので、保険会社ではなく銀行が取り扱います。大変便利で、金利や税金面で優遇され、しかもコストの安い商品です。
さて、このような商品を銀行が取り扱い始めたら、あなたは利用しようと考えるでしょうか。
すでに米国では始まっている!
この銀行商品、実は筆者の思い付きに過ぎません。日本には、このような商品はありません。法や規制の問題もあり、将来、日本で実現するかどうかもわかりません。ただ、米国では、すでにこのような商品が始まっており、わずかな期間に利用者が急増しています。
その代表的なものが2004年にスタートしたHSA(Health Saving Account:医療貯蓄口座)と呼ばれる預金と保険をセットにした商品です。そもそもは高騰する医療費の削減を目的に始められた制度ですが、銀行が積極的に取り扱っています。
銀行にとってHSAは医療保険分野に進出する絶好のチャンスです。保険業界にとっても銀行を窓口にしてストップ・ロス保険を販売できますので積極的です。なかには自前で銀行を設立し、HSAの取り扱いを始めている保険会社もあるようです。HSAのような銀行と保険との融合商品の出現は、両業界の接近に拍車をかけ、双方の業界地図を塗り替える可能性もある、として注目されています。
ところで、米国のHSAはあくまで医療費に特化して設計されたものです。しかし、医療費に限定せずにもっと広く緊急時の生活資金全般に使える、いわば「緊急生活資金口座」も考えられます。設計するのはそう簡単ではないでしょう。しかし、銀行が得意とする最近の金融工学のテクノロジーを駆使すれば十分に可能と思われます。
緊急におカネが必要な時に、いつでも銀行が資金を提供してくれるのならば、これはかなり利便性の高いサービスです。預金、保険、ローン、オプションなど多様な機能を包括した資金提供サービスを銀行が取扱うようになれば、保険業界には大きな脅威となるでしょう。
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