《ミドルのための実践的戦略思考》大前研一の『企業参謀-戦略的思考とはなにか』で読み解く家庭教師派遣会社の営業リーダー・細井の悩み

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ここでは本書の中で重点的に触れられているステップ1~5までを中心にその概要を見ていきましょう。

ステップ1:市場性の動的把握
 まず市場のサイズや成長性を概観し、どういう動きになっているのか、ということを把握します。この際、販売シェアの推移などを経年変化として具体的なファクトを持って押さえていきます。また、代替品の拡がりや関連製品など、関連市場の注目すべき動向なども捕捉します。

ステップ2:内部経済性の分析
 次に、当該商品のコスト構造や、全社収益への影響などを具体的に把握します。当然、絶対値や傾向を把握するだけでなく、「なぜそうなるのか?」という問いに対して、明確な仮説を持てるまで考えていきます。

ステップ3:競合状態の把握
 併せて競合の動きも追いかけます。シェアの変化だけでなく、競合の注力ポイントや強み、そしてその裏側に隠れている理由の仮説などを持つ必要があります。

ステップ4:購買意思決定分析
 その上で顧客を具体的に理解していくのですが、このために重要な分析が「購買意思決定分析」です。誰が購買決定者なのか、その意思決定者は何に基づいて意思決定を行うのか、ということを深く理解することによって、市場特性を深く把握します。

ここまでの分析をすることにより、この業界のKSF(その業界で勝つための重要なポイント)に対する仮説を立てます。

ステップ5:戦略オプションの抽出・評価
 ここまでの分析により業界のKSFを見極めたうえで、自社の状況と照らし合し、具体的にやるべきことを見定めていきます。評価軸を決めて、オプションを洗い出し、評価をして決定をしていきます。

さて、ざっと「製品・市場戦略」のアプローチを追ってきました。勘の良い方は既にお気づきかもしれませんが、これは細井さんが使った「3C分析」をより丁寧に分解したものです。では3C分析との違いはどこにあるのでしょうか?

一般に考えられている3C分析というものは、それぞれのCについて、目についた情報を漫然と並べただけとなりがちであり、残念ながら分析としてはほとんど役に立たないことが過半です。私も今まで多くのミドルマネジャーと接し、彼らの描く3C分析を見てきましたが、大抵は単なる箇条書きや目的もなく余白を埋めたもの、という状況になってしまいます。しかし、本来の3Cというのは、それぞれのCをこの「製品・市場戦略」のように個々の項目を深くファクトを持って分析しないと、意味のある解釈は引き出せません。そういう観点では、この「製品・市場戦略」は、「実践的な3C分析」と言えるでしょう。

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