《ミドルのための実践的戦略思考》大前研一の『企業参謀-戦略的思考とはなにか』で読み解く家庭教師派遣会社の営業リーダー・細井の悩み

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■理論の概説:『企業参謀-戦略的思考とはなにか』

『企業参謀-戦略的思考とはなにか』は、1975年に当時まだ30代であった大前研一氏が、マッキンゼーでのコンサルティング経験をベースに、経営戦略立案の考え方をまとめた書籍です。大前氏いわく、「自分の勉強のためのノート」とのことで、出版するつもりは毛頭なかったようですが、出版当初からベストセラーとなり、今でも時代を超えて幅広く支持される戦略の名著となっています。

この本が多くのビジネスパーソンに評価される背景はどこにあるのでしょうか。それは、環境変化によってどれだけビジネスの状況が変わっても影響されない、本質的かつ不変の「考え方」、「思考プロセス」が定義されているからと言えるでしょう。

本書ではまず物事の本質をつかむためのアプローチ方法(イシュー・ツリーやプロフィット・ツリー)、考えるための基本的な尺度(総資産利益率:ROAや、使用総資本利益率:ROCEなど)が紹介されます。その上で、後半ではそれらの考え方を踏まえ、全社的な中期経営計画立案や、個別具体的な既存事業における改善提案といった、より具体的な場面での頭の使い方が紹介されています。その中では、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、PLC(プロダクト・ライフ・サイクル)といった著名フレームワークも説明されています。

■製品・市場戦略(PMS=Product Market Strategy)
 本書の中から、今回特にご紹介したいのが「製品・市場戦略(PMS=Product Market Strategy)」と名付けられたアプローチです。

「製品・市場戦略」は、新製品や新規事業を考えるためのものではなく、「既存事業についてとことんまで考え抜き、改善策を考える」ことに主眼が置かれているところに特徴があります。

以下、具体的に見ていきましょう。

「製品・市場戦略」は上図に示した7つのステップで構成されており、2つに大別できます。まず、ステップ1~4までで「その業界において勝つためのポイント、すなわちKSF※)は何か、ということを見極め、その上で、ステップ5~7を通じて具体的な打ち手を考え実行していくという流れです。

※『企業参謀-戦略的思考とはなにか』ではKFS=Key Factor for Successと表記されているが、著書によってはKSF(Key Success Factor)、もしくはCSF(Critical Success Factor)と表記したもの場合も多い。本稿においてはグロービスで一般的に使っているKSFとして表記する。

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