コメの価格はいつになったら下がるのか? 「保護されすぎている農家」という構造的問題

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(写真:ブルームバーグ)
突然のように降ってわいた「令和のコメ騒動」。これまで、私たちは「安い」ということも「おいしい」ということさえも意識することなく、当たり前のようにコメを食べてきました。その無意識の大前提が、いま崩壊しつつあります。
いったい、何が起こっているのでしょうか。足もとのコメ価格の上昇は収まるか、どこまで下がるか…というレベルの問題ではなく、今回の価格高騰は、日本のコメ農業の大きな地殻変動を警告しているのです。
三菱総研・食農分野フェローの稲垣公雄氏と、三菱総合研究所「食と農のミライ」研究チームによる緊急出版『日本人は日本のコメを食べ続けられるか』より一部を特別に掲載します。

生産調整をやめると農家はコメをたくさん作る?

「減反政策によりコメの生産は抑えられている」と一般には思われている。政府が「生産目標の目安」を示さなくなったら、農家はどんどんコメを作る、という理解である。しかし、農家は「生産数量の目安」を参考にはしているが、それだけで生産する内容を決めているわけではない。

各農家が所有している農業生産基盤(主として農地)は決まっているので、そのリソースを前提に、主食用米の価格を見極めながら、主食用米以外を作るときの収益と比較して、主食用米の生産量を確定していく。おそらく、生産数量の目安を政府が提示することをやめただけでは、コメ農家の行動はほとんど変わらないだろう。

では、コメ生産政策のもうひとつの柱である、転作作物への補助金を大きく下げる、あるいはやめた場合は、どうだろうか。じつは、令和7年(2025年)の作付けは、主食用米の価格が大きく上昇したことによって、相対的に転作作物の収益性が大きく低下している状況にある。

(画像:『日本人は日本のコメを食べ続けられるか』)

その効果により、図4─1にあるように、主食用米の作付けは125.9万haから136.3万haまで、8.3%の増加になっている。転作作物の補助金を低下させることは、主食用米の作付けを増やす方向に農家を動機づけるのは間違いなさそうだ。

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