こうして始まったのが鴻海流の経営改革だ。鴻海の傘下に入った16年度には、シャープの営業利益は624億円まで回復した。実際、鴻海による経営改革が効果を発揮した部分もある。その1つが経営のスピードアップだ。
「昔のシャープでは、月に1度の経営会議にはめ込まないと決裁が取れなかった。鴻海傘下になったことで意思決定のスピードは上がり、今では必要なら(提案された)その日の午後にテレビ会議で決裁できる」(沖津社長)
しかし鴻海から送り込まれた経営陣が掲げた、徹底したコスト削減「節流(せつりゅう)」はシャープの中に歪みを生んでいった。研究開発のための人員は削減され、家電系の事業では広告宣伝費もほとんど使えなくなったという。
カリスマ創業者が去った鴻海
厳しいプレッシャーにさらされたシャープに転機が訪れる。19年に鴻海の経営トップ(董事長)が交代することになったのだ。シャープ買収を主導したカリスマ創業者のテリー・ゴウ(郭台銘)氏が去り、ヤング・リウ(劉揚偉)氏が就任した。
「今の董事長に代わるまでは、EMSの会社の考え方だった。交代後はEVやAIなど新規事業に取り組むようになり、その方向性がシャープと一致したことで、鴻海の力を借りることができるようになった」(沖津社長)
はたして大手電機メーカーとしての存在感を、再び放つことができるのか。「シャープらしさ」を取り戻すための試練は続く。
