アメリカで子供のSNS利用への規制拡大、保護者の同意など義務付け…事業者側は差し止め求め訴訟

【ニューヨーク=金子靖志、ワシントン=中根圭一】SNS事業者を相手取った訴訟が急増する米国で、子供のSNS利用を規制する法整備が拡大している。2日時点で、全米50州のうち少なくとも10州で関連法が施行され、新たに4州で施行を控える。一方、事業者側による訴訟で関連法の施行が差し止められるなどした州は7州に上り、子供を守るためのSNS規制を巡る綱引きが激化している。
子供のSNS利用を規制する関連法が施行されている10州のうち、テネシー、ミシシッピ州は未成年のSNSアカウント作成時に、ユタ州はSNSアプリのダウンロード時に、年齢確認や保護者の同意などを義務付けた。フロリダ州では、保護者が子供のアカウント削除を請求できる制度が導入されている。
米国で子供のSNS利用規制の動きが広がる背景には、メンタルヘルスなどへの深刻な影響がある。米疾病対策センター(CDC)の調査では、高校生の77%が頻繁にSNSを利用し、依存度が高いほどいじめや抑うつ、自殺企図が増える傾向が示された。
カリフォルニア大サンフランシスコ校の小児科准教授ジェイソン・ナガタ氏は、「子供の過度のSNS利用がうつ病や摂食障害などを招く」と規制の必要性を訴える。
今後、バーモントやミネソタ、ネブラスカ、バージニアの4州でも、新たな関連法の施行を控える。そのうちミネソタ州では6月、SNS利用時に「メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性がある」との警告を表示するよう義務付ける法案を全米で初めて可決した。
ただ、これらの州の関連法が実際に施行に至るかは不透明だ。SNS事業者側による差し止め訴訟が相次いでいるためで、これまでに少なくとも7州で関連法の施行が差し止められるなどした。
アーカンソー、オハイオ州では年齢確認や保護者同意などを求める関連法が恒久的に無効とされた。関連法が施行中のカリフォルニア、ユタ、フロリダ、テキサス州でも、一部条項の適用が差し止めとなっている。
事業者側は、州がSNSの利用を制限することは、米国憲法が保障する言論や表現の自由を侵害するなどと訴え、複数の裁判で事業者側の主張を認める判断が下されている。
SNS事業者は巨額の資金を投じて、「過剰規制は言論の自由を侵害する」と主張するロビー活動も活発化させており、共和党議員の一部も同調する。ただ、子供のSNS依存に関する訴訟が全米で拡大する中、民主党を中心に「子供の安全を守るため規制は不可欠」との声は根強く、規制強化と差し止め訴訟の応酬は今後も続きそうだ。
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