「保守王国」の茨城県で崩れた自民党の基盤、総裁選へ揺れる党員の思いとは?
塚本さんの自宅近くの田んぼでは、農道に自民党のポスターが並び、かつて地方に強固な地盤を築いていた頃の面影が残る。
自民党員であるにも関わらず参院選で他党に投票した例もある。「自民党でなければいいやという感じ」と話すのは、常総市でコメなどを生産する飯田好徳さん(40)だ。投票先は可処分所得の増加を訴えた国民民主党だった。
コメの価格高騰がことさら問題視されていたことについて「いろいろな物の値段が上がっているはずなのに、なぜコメだけが悪者扱いなのか」とこぼす。


水戸市で土木建築工事の設計などを行う中山秀一さんには、かつて建設業界と自民党が一心同体のように結び付いていた時代の記憶が残っている。日本経済が停滞して建設需要が鈍化した後も、自民党員として党を長年支えてきた。保守的な価値観が自身の信条と重なり合ってきたからだという。
「表紙を変えて小泉氏が出てきても、右という自民党本来の思想は戻ってこない」と話す中山さんにとって、自民党の真の右派イデオロギーの復活を期待できるのは高市氏だけだ。
妥協
多くの自民党関係者にとって、妥協なしには生き残れない現状がある。昨年の総裁選にも挑んだ小泉、高市両氏は改革派と目されていたが、今年は姿勢を軟化させた。少数与党の環境下では、政策実現のために広範な支持を取り付ける必要があることを理解しているためだ。
自民党の茨城県議会議員、高橋直子氏(41)も思い悩む若手議員の1人だ。来年の県議会選で再選を目指す高橋氏は、支持者の一部から自民党公認での出馬をやめるよう勧められることもあるという。特に若年層や同世代に自民党への投票を「お願いできなかったり、胸を張って自民党と言えない状態」と語る。

コメ農家の塚本さんは、笑顔の石破首相が印刷されたカレンダーの下で、自民党への長年の忠誠心と、党の将来への不安との間で揺れていた。次期首相になる人物として誰に投票するべきか、何十年にもわたる自民党への支持を続けるべきかどうか。
特定の政党が権力を握るのではなく、複数の政党がしのぎを削る現状の構図の方が望ましいと塚本さんは言う。自民党が再び単独で政権を取ると「好き勝手やるようになっちゃうから」

著者:野原良明、梅川崇
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