iPhoneカメラ高画質の秘密はTDK、AGC、京セラ、ソニーといった日本製部品にあり。ティム・クックCEOが表敬訪問した理由
AGCの技術が不可視光のフィルターだとしたら、京セラの技術は電気信号の濁りをカットする電磁波のフィルターと言えるかもしれない。
京セラはアップルにも通底する哲学を持つ会社
1959年創業の京セラ。その創業者、稲盛和夫名誉会長が2022年に逝去した記憶がまだ新しいが「人間として何が正しいか」に基づき、従業員同士の「人間の心の絆(bond of human minds)」を重視する哲学は今も息づいているという。35年間、アップルを取材してきた筆者の意見だが、これはアップルにも通底する哲学だと思う。
アップル製品のカメラモジュールに使用されている京セラの製品は多層セラミック基板(multilayer ceramic substrate)、セラミックコンデンサ(ceramic capacitors)、そして水晶デバイス(crystal devices)だが、イベントでは多層セラミック基板が中心の紹介となった。
iPhone 17 Pro Maxを含む最新製品で背面カメラ、前面カメラ、およびFace IDモジュール用に提供されている。
基板を作るプロセスだが、まずはセラミックシートと呼ばれる柔らかく薄いシートに微細な配線パターンを印刷することから製造が始まる。一見すると、ただの緑色のシートなのだが、光に透かすと無数の小さな点や線が印刷されていることがわかる。
その後、アップル製品に要求される複雑な回路を実現するために、これらのセラミックシートを何層にも重ねていく。iPhoneに使用される基板は、11層が特徴で、そこには1000個もの精密な穴が正確に配置されている。これらの穴は光に透かさなければ見えないほど微細でありながら、各層を電気的に接続する重要な役割を担っている。
配線パターンが印刷された層を重ねた後、ラミネーション(積層)工程に進む。この積層工程では、各層をしっかりと一体化させ、上から下まで単一の構造体となるように圧着する。続いて切断を行い、これを1600度の熱で焼成する。するとおよそ15%縮まった硬いセラミックの立体的な基板となる。
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