iPhoneカメラ高画質の秘密はTDK、AGC、京セラ、ソニーといった日本製部品にあり。ティム・クックCEOが表敬訪問した理由

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TDKは1935年設立で、日本で初めてフェライト磁石を工業化し磁性材料に強い会社。iPhoneにかかわる遥か前には、日本中に普及した黒電話で呼び鈴を鳴らすのに用いられ、その後はカセットテープで名を馳せた。

現在はセンサー、エネルギー、磁気ソリューションによってデバイスをスマートにする未来を形作る会社として、世界最大のバッテリーの供給元であることに加え、インタダクター(コイル)、マイクロフォン、多くのセンサーなど幅広い製品を提供。

砂粒より小さな機械をシリコンの上に作り込んだ“超小型の機械部品(MEMSデバイス)も得意分野となっており、今回、プレゼンしたTMRセンサーもこれに当たる。TDKの展示の1つが黒いパウダーの入ったワイングラスだったが、実はくしゃみをすればすべて吹き飛びそうなこの黒い粉こそが5万個のTMRセンサーだったという。

TDKは、アップルとは30年近くビジネスを続けており、初代iPodにも部品を提供しているが、その多くはパッシブ部品やバッテリーやコンデンサなど縁の下力持ち的存在だった。

そんなTDKにとって転機となったのが2020年登場のiPhone 12で、光学手ぶれ補正で同社の技術が採用された。その後、今回、ティム・クックCEOにプレゼンを行ったTMRセンサー(磁石センサー)を組み合わせたAFアクチュエータ技術など、少しずつ採用が広まり、今ではMagSafeに使われているセンサーなどもTDKが供給しているという。

TMRとは Tunneling Magnetoresistance(トンネル磁気抵抗効果)の略で「磁石の向きを電気抵抗の違いとして読み取れる技術」。オートフォーカス(AF)や電子コンパスへの応用が可能なセンサーで最新のiPhone Airや17、17 Proシリーズなど全製品で採用している。

レンズと一緒に動くアクチュエータに磁石を組み込み、位置変化をセンサーで検知することで高速かつ高精度にフォーカス制御ができ他社製品よりも正確で滑らかなAFを実現する。

ところで、アップルといえばサプライヤーも含めたサプライチェーン全体で2030年までに完全に再生可能エネルギーに移行する宣言をしていることで有名だが、TDKもアップルがこの公約を守れるように最大限の努力をしている。実は「今年度から、すべての製品製造において100%再生可能エネルギーを利用している」という。クックCEOもそれを聞いて嬉しそうな表情を浮かべていた。

AGC、無機と有機で実現した人が自然と感じる光

AGCが提供するデジタルカメラ向け色調補正用フィルターは、CMOSセンサーが捉えてしまう人間の目には見えない光の成分を取り除いて、写真を人間の目が見た色に近い形で記録してくれる(AGCのホームページより)
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