1日約3万5000回も決断「人間」の知られざる能力 AIにはできない選択という行為 脳科学者・茂木健一郎さんが語る"AIの今"
これが今、世界最先端の学力観であり、教育先進国は時代にマッチした真の学力を得るための教育を選択し、追い求めているのです。
日本では明らかに教育の選択が自動化されてしまっていますが、もはやこのAI時代にペーパーテストを解く能力などあまり意味がないことに気づいていない。
そうした学力観の変遷に日本社会がようやく気づいたときに、関連する教育産業は崩壊すると私は予測しているのです。
何を学び、どんな仕事に就くか――
AIがますます発展していくこれからの時代において、「何かを選ぶ」ことの重要性を解説しました。
「学力観の変遷」という話をしましたが、実はすでに日本でも「エグゼクティブ」と呼ばれる最上位層は既存の教育システムからいち早く脱却し、子どもの教育にインターナショナルスクールや海外のボーディングスクール(全寮制の寄宿学校)といった選択をしているようです。
では、少し視点を変えて、その先にある選択に目を向けてみましょう。
何を学び、どんな仕事に就くか。これは、人生における分岐点であり、誰もが避けることのできない重要な選択です。
私は職業柄、多くの大学生と接しますが、彼らと話をしていて時々残念に思うことがあります。それは、「将来やりたいことがない」という声が聞こえてくるときです。
どんな仕事に就くかというのは、学生たちにとっては極めて重要な選択ですから、慎重に決めたほうがいい。それは私も同じ意見です。
ただ、これからのAI時代に求められる選択として、自分が没頭できる選択をすることで思いもよらない未来が待っているということを知ってもらいたいと考えているのです。
以前、私は小学生の子どもたち向けのアートスクールで特別講師をしていたことがあります。そのときに印象的だった出来事があります。ここで少しだけ触れておきたいと思います。
当時、「Garage Band(ガレージバンド)」という音楽ソフトが流行っていた時期でした。そこで私は、その子どもたちに、「この中で、Garage Band で曲を作ったことがある人はいるかな?」と訊ねると、30人中3人の子どもが手を挙げました。
私はこのとき、Garage Bandで音楽を作ることが小学生のころからできるかどうかというのは、やはりこれからのAI時代で脳を覚醒するカギだと思っていて、「この3人は将来期待できる大人になるかもしれないな」とひそかに楽しみにしているのです。
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