
中国のディスプレーパネル大手のTCL華星光電技術(TCL CSOT)は、広東省広州市に「印刷方式」の第8.6世代OLED(有機EL)パネルの生産ラインを新設する。親会社の家電大手、TCL科技集団が9月12日に発表した。
TCL華星は広州市政府および広州経済技術開発区管理委員会と共同で、新生産ラインの建設に総額約295億元(約6114億円)を投じる計画だ。
現在主流のディスプレーパネルにはLCD(液晶)とOLEDの2種類ある。そのうちOLEDの市場では、韓国のサムスンディスプレイやLGディスプレイが主導的地位にあり、中国最大手の京東方科技集団(BOE)や第2位のTCL華星がそれを追いかけている。
かつてはJOLEDが先行
OLEDの製造技術に関しては、真空中で発光材料をパネル基板に蒸着させる「蒸着方式」をほとんどのメーカーが採用しており、TCL華星も例外ではない。だが同社は、非主流の技術である印刷方式の研究開発にも投資を継続してきた。
印刷方式では、インクジェットプリンターのような装置で発光材料をパネル基板上に精緻に塗り分ける。蒸着方式に比べて製造工程がシンプルで、発光材料の無駄も少なく、コストダウンや歩留まりの面で有利とされる。その一方、品質管理の難しさやインクに適した発光材料の開発、高画素化などの面で課題を抱えていた。
もともと、印刷方式OLEDの実用化では日本のJOLED(ジェイオーレッド)が先行していた。しかし同社は2023年3月に経営破綻したため、業界内には印刷方式OLEDの開発継続は困難との見方もあった。
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