迫る「2028年の崖」、5人の候補者たちが見落としている《総裁選2025が自民党政治の"終わりの始まり"となりかねない》根本的理由
テレビやネットを通じて総裁選の討論やニュースが大々的に流され、自民党への注目度が増しているが、今の自民党が抱える本質的な問題を見失ってはいけない。
5月配信の記事(7月参院選は大きな試練に!「結党70年」を前に行き詰まる自民党、原因は"GPS"にあり)では、自民党が抱える問題点として「GPS」と指摘した。すなわち、⓵裏金問題で露呈した党組織のガバナンス(G)の欠如、⓶物価高や格差拡大に対処すべき政策=ポリシー(P)が時代遅れになっている、⓷小泉純一郎氏から石破茂氏まで21世紀の総裁・首相7人のうち6人が世襲(S)という現象に見られる人材不足、である。
昨年の衆院選と今夏の参院選では、こうした自民党の抱える問題が有権者から批判を浴び、衆参両院で少数与党に転落したのである。
ところが、今回の総裁選では裏金事件の真相解明や再発防止策などに正面から取り組む姿勢は示されず、自民党のガバナンス問題は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という状況だ。世襲議員の増加が自民党の活力を弱めていることも、ほとんど議論されていない。
置き去りにされた「物価高」と「格差拡大」
そして、自民党の政策が行き詰まっている現状が直視されていないことが深刻だ。具体的には、物価高と格差拡大への有効な対策が示されていない。
今夏の参院選で石破自民党は物価高対策として一律2万円の給付金を配ることなどを提案したが、多くの有権者からには「選挙目当てのバラマキ」と映った。これに対して、「年収の壁の大幅引き上げ」を唱えた国民民主党や、「消費税の段階的廃止」などを公約に掲げた参政党が大幅に議席を増やした。
都市部では、食料などの物価高騰が家計を圧迫。地方では少子高齢化が進んで、医療や教育などの公共サービスにも支障が出ている。そうした「不安」が政権与党への批判につながり、国政選挙での自民党の退潮となって表れたのである。
株の配当や売却益などで潤う富裕層と低賃金にあえぐ非正規労働者との格差は、かつてないほど拡大しているが、自民党は是正に向けて有効な対策を打てないままだ。金融資産への課税強化や相続税の増税などを財源にして、低所得者への支援を拡大するのが格差縮小への近道だが、自民党は経済界への配慮などから、具体策には踏み込めていない。
仮に自民党内で新たな政策がまとまったとしても、衆参両院ともに少数与党という現状では、自民党の案が実現する保証はない。野党の賛同を得なければならないからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら