迫る「2028年の崖」、5人の候補者たちが見落としている《総裁選2025が自民党政治の"終わりの始まり"となりかねない》根本的理由

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日本維新の会や国民民主党と個別に政策協議を進めて、過半数を確保するのか。野党第一党の立憲民主党との歩み寄りを進めるのか。各野党には、国政選挙での公約や支持団体との関係もあり、妥協は容易ではない。自民党にとって「野党の壁」は厚い。

総裁選で選ばれた新総裁は臨時国会での首相指名を受けて、組閣・党役員人事を進める。臨時国会で物価高対策を盛り込んだ補正予算案などが審議されるのは10月下旬となる。参院選の投開票(7月20日)から3カ月間の政治空白を招いた自民党混迷の責任は、厳しく問われなければならない。

さらに、新内閣に対しては、野党側から「自民党内で選ばれたにすぎない。国民の信を問え」といった要求が強まるだろう。年明けの2026年1月からは通常国会が始まる。与野党が対決を強める中で、衆院の解散・総選挙のタイミングが焦点となる。

参院選で躍進した参政党が、多くの衆院の小選挙区で候補者擁立に動き、自民党の支持層を奪う可能性が高い。自民党の苦戦は必至だ。

さらに自民党にとって深刻なのが「2028年の崖」だ。今夏の参院選(改選議席124)で、石破首相は自民、公明両党の獲得議席目標を「50」と明言した。50議席を得れば参院で過半数を維持できるからだ。だが、結果は自公の獲得議席は47(自民39、公明8)。石破首相の責任が問われ、結局は退陣を余儀なくされた。

一方、3年後の2028年夏の参院選で改選を迎える自民党議員は62人(会派離脱の議長を含む)、公明党議員は13人もいる。2022年の参院選で自公が大勝したときの改選だからだ。

すでに過半数を割り込んでいる自公が、2028年の参院選でさらに勢力を減らす可能性は極めて高い。自民党が党運営や政策づくりで再生できなければ、3年後には崖から転落する。少数与党状況はいっそう深刻になるのだ。

「解党的出直し」は本当に可能なのか

自民党は今夏の参院選での敗北を総括する中で、「解党的出直しが必要」という見解を示した。だが、その「解党的出直し」の中身は明確ではない。

党組織のガバナンスの確立を進めようとすれば、政治資金の透明化や企業・団体献金の規制が必要になるが、これまでに示されたガバナンス改革は中途半端な内容にとどまっている。政策の抜本的な練り直しは、業界団体の抵抗もあって進みそうにないのが実情だ。

饒舌な5人で争われる総裁選は、討論会や街頭演説などが各地で開催され、表向きはにぎやかに繰り広げられるはずだ。だが、自民党が置かれた苦境は変わらない。「解党的出直し」がかけ声倒れに終わるようだと、自民党政治は終焉に向かうだろう。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)、『自民党幹事長』(ちくま新書)など。

 

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