杭打ち偽装拡大、欠陥発覚後の対処法とは? 専門家を交えて交渉しても、解決は難しい

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横浜のマンションに関して、売り主の三井不動産は、傾いた1棟を含む全4棟の建て替えを基本案として提示。基本的にこれ以上はない手厚い補償案となったのは、杭打ちを手掛けた旭化成グループ、売り主の三井不動産とも、それに耐えうるだけの資金力があるからだ。だが、欠陥住宅の問題では、責任の所在や補償の内容をめぐって、業者と住民の交渉が泥沼に陥るケースも少なくない。

調停成立は5割程度

「うちのマンションは大丈夫なのか」

国交省が指定する住宅専門の相談窓口である、公益財団法人の住宅リフォーム・紛争処理支援センターには、今回の問題発覚をきっかけに問い合わせが増加している。

同センターは紛争処理のため、専門家(弁護士・建築士)の紹介・斡旋をしている。2000年から2014年までの紛争684件のうち、調停などが成立したのは366件(戸建て含む)と約半数。不成立の場合は裁判を起こすか、訴えを取り下げることになる。住宅の構造は専門性が高く、欠陥の立証が困難なことが泣き寝入りの多くなる一因だ。

同センターによると、マンションの欠陥で争点となるのは、隣の住戸の騒音やひび割れなどが多く、「傾斜のような深刻なケースは極めてまれ」という。しかし、傾斜の場合は住民が気づきにくく、発覚していない可能性もある。

道営住宅に関して、旭化成建材はデータ偽装を認めたが、「適正に施工しているので安全性に問題はない」としている。が、詳細な調査がなされないかぎり、その言葉を鵜呑みにするのは早計だ。

「週刊東洋経済」2015年11月7日号<2日発売>「核心リポート02」を転載)

茨木 裕 東洋経済 記者

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いばらき ゆたか / Yutaka Ibaraki

1975年生まれ。「週刊東洋経済」編集部所属

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