全国中学校体育大会が2027年から規模縮小【9競技削減】へ──交錯する中体連と競技連盟の思惑の中で見直し進む、<中学生の「日本一」の価値>
──部活動の地域移行と全中大会の見直しはお互いに影響しあって進んできたわけですね。
そうですね。地域移行は、スポーツ庁だけではなく経済産業省も関係しています。関係官庁から中体連に対し、全中大会のあり方について「今後、部活動は学校から地域に移るので、学校の部活動以外も全中大会に参加できるようにしてください」という要請があったようです。
ただ、民間や地域のクラブは学校教育とは関係ないため、学校が責任を持つのもなかなか難しい。そのため全中大会の参加は難しいだろうとされてきたのですが、現在は認定されたクラブであれば全中大会に参加でき、中には全国優勝しているクラブもあります。
なお、スポーツ庁や経産省の要請は競技数削減や全中廃止などという話ではなく、これとは別に、あくまで中体連の判断で今回の全中大会の規模縮小に至ったと私は理解しています。
教員が運営するにはあまりにも規模が大きい全中大会
──全中大会の規模縮小に関する議論は最近始まったのでしょうか?
1979年に始まった全中大会は80年代に肥大化し、90年代には「続けていけるのか?」という指摘がなされるようになりました。そして2000年代に中体連に諮問機関ができ、抜本的な解決が必要とされたのです。
その後はスポンサーの問題や保護者、生徒、教員それぞれの思いがあって手付かずの状態でしたが、部活動の地域移行・展開の勢いを借りながらようやく改革に着手した形です。
全中大会の問題点は、競技も参加者も増えて人員が足りないこと。学校の教員はあくまで授業が仕事ですが、部活動の顧問としての指導も行っている状況です。大会があれば引率もしますし、全国大会となればその分、負担も大きくなります。
加えて、全中大会は都道府県をまたいだ広域ブロックで行われ、自治体や知事も動くような大きなイベントです。経済効果が期待されたり、交通網を整備する必要があったり、例えばスキー大会などは陸上自衛隊が雪上整備を担うなど、もはや一大スポーツイベントなのです。ここまで規模が拡大した全中大会を、中学校教育の公式活動として行うことが果たして持続可能なのかという議論もあります。
金銭的な面でも、これまでは全中大会における施設利用費などは「公的イベントだから」と減免がありましたが、近年は自治体などが使用料を求め始めており、その分出場者に参加費がかかったりと、全中大会実施に伴うコストが増えています。
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