全国中学校体育大会が2027年から規模縮小【9競技削減】へ──交錯する中体連と競技連盟の思惑の中で見直し進む、<中学生の「日本一」の価値>

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縮小

コストをかけて維持する以上、どこかで線を引かなければなりません。すべてを平等に抱え込むのではなく、基準を設けたドライな線引きをしたことは、中体連にとっても難しい決断だったと思います。

中澤篤史
中澤篤史(なかざわ・あつし)早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部教授/1979年大阪府生まれ。東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修了。一橋大学大学院社会学研究科講師・准教授を務めたのち、早稲田大学スポーツ科学学術院教授に就任。2022年より現職。スポーツ社会学・身体教育学・障害学を専門としている。著書に『そろそろ、部活のこれからを話しませんか:未来のための部活講義』(大月書店)、『「ハッピーな部活のつくり方」』(岩波ジュニア新書:内田良氏との共著)がある(撮影:今井康一)

民間クラブや各競技の発展まで中学校が背負うべき?

──そもそも、なぜ競技削減が必要なのでしょうか?

実は「マイナー競技」と言われる競技の中には、学校教育の部活動として行われている実態はなく、普段は民間や地域のクラブで活動して、大会だけ部活動の形で出ている団体もあります。

例えば水泳は民間のスイミングスクールからの大会参加が非常に盛んですし、新体操や冬季競技のスキー、スケートなども民間団体の出場に依存する形で行われてきました。そのため中体連関係者は、「これは部活動なのか?」という複雑な思いをずっと持ちながら大会を運営してきたわけです。

そこで中体連も、どこかで線を引かなければならないなら、「部活動として学校が責任を持ってしっかり面倒を見ている実態」があることを1つの基準として競技を選定したと聞いています。

とはいえ民間団体が多い水泳などは、全中大会から外れることを深刻には捉えていないでしょう。しかしハンドボールなどでは、全中大会は大きな意味を持っていましたから、連盟はどうにか継続する方法を模索中だと思います。

競技人口の少ないマイナー競技は、その普及・発展を学校の部活動に依存してきた面があります。部活動さえあれば、将来の競技人口を確保でき、全中大会などを通じて優秀な選手の発掘もできるからです。しかし、本来これらは競技連盟の働きかけで獲得すべき機会ですから、今まで学校側が担ってきた役割を各連盟に突き返したという見方もできます。

──近年、中学校の部活動は地域移行が推進されてきました。全中大会の縮小に関する議論は、部活動の地域移行と並行して行われたのでしょうか。

2020年に「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」が考えられるなかで「休日の部活動を地域に移行しよう」という案が出てきました。それを引き受ける形で、2021年に地域移行に関する検討会議が立ち上がり、2022年にはその答申が出ました。この流れで「部活動のあり方を考えるなら、大会のあり方も考えなければならない」として、中体連や全中大会のあり方がアジェンダ化されるようになったのです。

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