「和」を重んじる日本式の企業統合と上場────エージェントが提唱する「アライアンスIPO」は日本を救うか?

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「小さい規模でビジネスをしていると、大きな設備投資もできないし、経営効率を上げるのも難しいものです。アライアンスIPOは、そんな中で中小の企業が協力することで経営効率を上げることに挑戦していくひとつのビジネスモデルです。たまたま我々は人材業界でやっていますが、将来的には他の業界にも展開していきたいと思っています。

介護業界とか、美容業界でも中小企業が協力し合って経営効率を上げていくというビジネスモデルは実現可能だと思っています。そのパッケージングを、我々が今第1号案件として自ら取り組むことでノウハウを固めていこうとしているところです」

企業数でいえば日本企業の約99.7%が中小企業だ。しかし、0.3%しかない大企業が半分の売り上げを上げている。つまり、多くの企業の規模を大きくすれば、日本全体の生産性向上に寄与するというのも道理である。

欧米型のM&Aではなく、日本らしい「アライアンス」

株式会社エージェントは、さらにその先も考えている。SES企業の企業体力をアライアンスIPOで高めて、目指すのはAX(AIトランスフォーメーション)だ。

「もっとAIを実装して、生産性を上げる。我々中小企業が手を取り合って生産性を上げていくけれど、最終的にはAIを使ったサービスで日本自体の生産性を上げていきたい。そんな大義に賛同いただける会社をたくさん集めていきたいと思っています。

単に『これやると儲かるよね』という話ではなく、本当に価値のある、大義のあるビジョンに乗っかっていただきたいと思っているんです。僕らは、自分たちのことを『ソーシャルベンチャー』と定義しており、『社会課題を事業でどう解決していくか?』ということを普段から考えています」

そのために考えたのが「アライアンスIPO」という方法論だ。

「僕の勝手な持論ですが、会社を買うとか、売るとか、M&Aは欧米からきた経営手法で、要はどちらかが従属関係に入るというやり方です。でもそれって、日本に合っているやり方なんでしょうか?

日本って、村社会で、みんなで協力してうまくやりくりしてきた国なので、合議で協力してやっていく方が風土に合っているのではないかと感じています。なんでも欧米型のやり方をインストールするのではなく、日本らしくみんなで手を取り合って協力して拡大していきましょうっていうやり方があってもいいのではないでしょうか?

だから、あえて欧米型のM&Aはなく、日本型のアライアンスというやり方を確立させ、中小企業の新しい事業成長モデルを世の中に発信していきたいと考えています」

たしかに四宮代表の語ることは正論だ。M&Aには勝者と敗者があって、痛みを伴う。買収された会社の経営者は、最終的にポストを追われることが多いし、従業員も「買われた会社の社員」として、肩身の狭い思いをし続けることになる。その状態で、生産性が上がるとも思えない。

だったら、一緒になる会社の経営者も、社員も一緒にスクラムを組んで、全員が前向きに未来へ進んでいける形の方が、全体としてのパフォーマンスは上がるかもしれない。

すでに、エージェントの子会社と、他の数社のアライアンスのプロジェクトは進んでいるのだそうだ。日本型の新しい、複数の会社が一緒になって株式上場を目指す仕組み「アライアンスIPO」が成功するのかどうか? そのチャレンジに注目しておきたい。

村上 タクタ 編集者・ライター

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むらかみ たくた / Takuta Murakami

iPhone、iPadなどアップル製品を中心に扱うガジェット・テクノロジー系編集者・ライター。カリフォルニアでのWWDCやiPhone発表会には2016年頃から継参加。趣味の雑誌の編集者として、’92年から約30年で約600冊の雑誌を作ってきた。バイク雑誌『ライダースクラブ』に携わり、ラジコン飛行機雑誌『RCエアワールド』、海水魚とサンゴ飼育の雑誌『コーラルフィッシュ』、デジタルガジェットのメディア『flick!』『ThunderVolt』の編集長を務める。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー。バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、庭での野菜作り、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。娘はロンドン、息子は台湾在住。

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