公立新設校が躍進、名門私立を脅かす存在に 本当に強い中高一貫校
小石川、両国……。かつて「ナンバースクール」と呼ばれた都立の伝統高校が中高一貫校に姿を変えて、復活してきた。「第2次ブーム」といわれた私立一貫校の受験ブームがちょうど終わりを告げたタイミングであり、私学側には「民業圧迫」との声も少なくない。
「都立は当初は2校の予定だったが、知事さんに強い思いがあったのか、区立も含めて11校に増えてしまった」と教育関係者は振り返る。
そもそも公立中高一貫校はゆとり教育の一環から1999年以降生まれてきた学校だ。高校受験をせず、同じ学校で6年間を過ごすことのできる中高一貫校は「反受験」が基本であり、たとえば東京大学への入学を目標に置く、私学の難関一貫校とは競合しないはずだった。それはまた公立一貫校に対する私学の見立てでもあった。
ところが実際に計画が動き出すと、都立を中心に公立一貫校は“独走”を始める。「都がね、中高一貫で東大に学生を入れる学校を作るんですよ」。東京都の担当者は周辺にそう説明して回ったという。その構想が現実の姿となったのが昨年春。都立白鴎の1期生から東大に5名の合格者が出た。私学関係者の間で「白鴎ショック」と呼ばれたのが、5名という数字の重さを物語る。それに続く小石川や桜修館も今年、東大に卒業生を送り込む。
まさにエリート育成校であるが、それでいて授業料は安い。受験生を持つ親が飛びつかないわけはない。当初の受検倍率は17倍などにハネ上がった。最初は宝くじ感覚で受けていた受検生も多かったという。「今は平均で7倍から8倍。それでも2倍から3倍の私立に比べれば高いが、2~3年かけてじっくり挑む生徒が増えてきた」と大手進学塾、市進の原園明宏教育本部長は話す。
厳しいのは私立一貫校である。私立中学受験者はなだらかに減少を続けている。リーマンショックや東日本大震災が私学にはより強い逆風になった。上位難関校の一角でさえ、志願者減に見舞われている。「下位校はもっと大変。1回の試験で定員を集めることができないので、数回試験を行うが、それでも補充できないケースが多い」(学習塾関係者)。