年に一度のノンストップ山手線に乗ってみた 大崎発・大崎行き団体貸切列車の正体とは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

渋谷駅に近づくと、天井のスピーカーから「ホームに向かって手を振ってください」という綱嶋さんの声が聞こえてきた。止まらない列車の中で乗客が手を振る姿を、ホーム上の客が不思議そうに見つめていた。

「駅では『次に参ります列車はご乗車になれません』とアナウンスしていると思います」。乗り合わせたJR東日本の社員が、そう教えてくれた。それでも、まさかその列車に満員の客が乗っていて、しかもホームに向かって手を振るとは思うまい。

「以前はホームに向かって『止まってあげないよ。あっかんべえ』とやっていた。でも、さすがに品がないので手を振ることに変えました」と、綱島さんは笑う。列車内では、ギター演奏あり、着物を着た外国人の一団の行進あり、警視庁のマスコットキャラクター「ピーポくん」も練り歩く。

乗客全員でつなぐ"夢の架け橋"

終盤には乗客全員が手をつなぎ、人の輪を作った(撮影:尾形文繁)

東京駅を過ぎ、行程も終盤に差し掛かった頃、車内の乗客が全員で手をつなぎ始めた。環状の山手線で11両の車内の全員が手をつないで人の輪を作る。参加者全員が一体となる。第1回からの恒例行事だ。

15時37分、列車は定刻どおり、大崎駅に到着した。参加者はスタッフに誘導されて列車を降りる。名残惜しいが仕方ない。数分後には後続の列車がやってくる。

1時間ずっとマイクを握りっぱなしだった綱嶋さんの手にあったのは、バケツとぞうきん。おそらく車内の清掃作業をするのだろう。後始末まできちんと終えるからこそ、次回がある。

「夢さん橋」号とは、夢の架け橋という意味だ。夢を実現し、継続させるには不断の努力が欠かせない。ノンストップ山手線は、そんな当たり前のことをまざまざと見せつけてくれた。

大坂 直樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事