「悪徳転職エージェント」が転職者を食いモノに!「おとり広告」と「職務履歴書の改ざん」で儲ける驚くべき手口

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一部の悪質な転職エージェントは、収益のために手段を選ばない。実効的な摘発が乏しい現状を背景に、職安法や景品表示法で規制されているはずの「おとり広告」を平然と掲げる。

代替で提示した案件が成約すれば手数料収入になる。仮に成約しなくても、かき集めた登録者データは「統計資料」「意向調査」などの名目で、採用に窮する企業や他のエージェントへ販売され、別の収益源になる。

その際、名目上は匿名でも、居住エリア・年齢階層・資格・年収・職務の断片が組み合わされれば、容易に特定の個人が推測される粗さで提供されることがある。個人が特定されやすいほど、買い手にとっての利用価値は高く、高値で売れるからだ。

別のエージェントに渡れば、販促のFAX広告に転用され、山本のように現職の職場へ無差別にばらまかれるおそれもある。合意書の「提携先へ情報提供」という一文を、求職者は「限られた関連先」と受け止めがちだが、悪質な事業者にとって“提携先”の定義は、販売先を含むよう巧妙に設計されていることがある。

経歴の改ざんを指南しても、エージェント側は「求職者の強みを強調する助言にすぎない」と抗弁しがちだ。どう転んでも、最終的に不利益を被るのは、常に求職者となる構図になっている。

「圧に負けない」強さが必要

「視線に耐えられない」「安易に合意してしまう」「改ざんを受け入れてしまう」。山本の失敗は、他者からの圧力に屈した結果でもある。

実は、転職の成否には、本人の実力以上に「転職適性」が不可欠と言われている。圧に負けないことは、転職適性の1つだとされている。山本は仕事ぶりでは評価されていた。実力はあるが転職では失敗したのだ。転職適性は仕事の実力があるからといって備わるものではないが、後天的に身につけることは可能だ。

魑魅魍魎が跋扈する時代、一部の悪徳エージェントから身を守り、転職を成功に導く適性を身につけることを忘れてはならない。

なお本稿は、悪質事例に光を当てて注意喚起するものであり、誠実に運営する多くの転職エージェント・紹介会社が存在することを、最後に付記しておく。

川野 智己 転職定着マイスター/組織づくりLABO代表

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かわの ともみ / Tomomi Kawano

1962年生まれ。伊藤忠アカデミーの教育マネジャーを経て、大手人材紹介会社の教育研修部長として従事。斡旋した転職者の多くが早々に離職し、労働市場での価値を自ら下げている人(ジョブホッパー)が多く生まれている惨状に強い問題意識を持つ。

そこで、転職定着・離職防止に取り組み、8年間にわたり転職予備軍に対して「転職先での働き方・人間関係構築のノウハウ」を伝え、転職後のミスマッチ退職率を1年間で44.0%から9.1%にまで劇的に引き下げた。

その経験を活かし、2006年に組織づくりLABOを設立、代表に就任。日本初の転職定着マイスターとして、転職者および予備軍のべ約2000人に対して個別カウンセリングやセミナーを行っている。併せて、採用側の企業が取り組むべきリテンション(離職防止)策を普及させるべく、全国での講演登壇や主要経済誌への執筆、TV出演などの幅広い活動を行っており、労使両面からの「職場と働き手の最適解」を発信している。

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