死亡事故も発生、テスラの「ドアハンドル」が危険な理由とは?「固着する」「開かない」など不具合に関する苦情は2018年以降140件以上に
テスラの設計の内情を知る関係者によると、テスラ車のドアには湾曲した部分がないため、窓の上下動やドアハンドル、ロックシステムなどを駆動するモーターや電気部品のためのスペースが小さい。このため、同社のエンジニアは緊急時にドアのロックを解除する手段としてワイヤー式の解錠システムを採用した。
関係者は公に話す権限がないとして、匿名を要請した。
後部ドアの手動解錠装置がなかった
同様の設計はサイバートラックを含む市場に投入された全てのテスラ車に受け継がれ、サイバートラックでは部品を収納するドア内部のスペースがさらに小さいと、関係者は指摘。サイバートラックはテスラとして初めてドアハンドルを完全になくし、ドアを外側から開けるには窓枠の下の部分にあるボタンを押す必要がある。
手動解錠装置の設置場所は、モデルによって異なる。例えばモデルSでは、手動解錠用ケーブルは後部座席前方のカーペットの下にある。同社はオーナーズマニュアルに解錠装置の場所と使用方法を明記しており、ここ数年は後部座席の乗員が電源なしでもドアを開けられるようにしてきた。
だが、テスラの主力車種の一部初期モデルには後部ドアの手動解錠装置がなかったことが、マニュアルからも確認できる。具体例を挙げると、発売された2017年から23年までの「モデル3」には、後部ドアの手動解錠装置が設置されていない。また同社によれば、モデルYも20年から24年に製造された全ての車両に後部ドアの手動解錠装置が装備されているわけではない。この期間、モデルYは世界で最も売れた車種の一つに数えられていた。
「もし自分が誰かの車に乗せてもらったり、レンタカーやロボタクシーのモデルYに乗り込んだりした場合、この仕組みを知っているはずがない」と、ワシントンに拠点を置く自動車安全センターの執行役員、マイケル・ブルックス氏は語った。「宝探しゲームのような仕組みであってはならない」とも述べた。
テスラのドア開閉の問題は、モデルSの初期から存在していた。2012年9月に掲載されたニューヨーク・タイムズ紙の好意的なレビューでさえ、モデルSのドアを開けるには複数の手順が必要で、何度か試みなければならない場合があると指摘している。レビューの筆者は「テスラは時に革新への欲求が行き過ぎる」と記した。
マスク氏は2013年5月の決算説明会で、オーナーがモデルSを修理・点検に持ち込む原因となる共通の問題があるかと問われた際、ドアの不具合だと認めている。
「テスラはかなり凝ったドアハンドルを採用しており、センサーの故障がが時折発生する」とマスク氏は述べ、「ドアハンドルを引いても開かないことがあるだろう。顧客にとっては非常に不快なことだ」と続けた。