老舗中小証券会社の苦境、相次ぐ廃業・撤退 東証の合併上場を契機に加速も

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株価低迷に伴い、海外の金融商品のニーズが広がったことも、中小証券には逆風となった。外貨建て投資信託など、株式以外の商品拡充の手を打っても、大手との品ぞろえの差は歴然。「顧客はすでに銀行などで投信を購入しており、うちが投信を始めても振り向いてくれない」と、ある中小証券の役員は嘆息する。

不振の対面営業部門を売却しようとする動きも見られるが、「うわさでは売却額がゼロ円のケースもある」(別の中小証券役員)。売却先探しは一筋縄ではいきそうにない。

不採算事業を支えようと各社が注力してきたのが、自己売買(ディーリング)だ。しかし近年、ヘッジファンドなど海外勢の日本株への影響力が増し、国内の投資家が取引する日中の値動きは乏しい。昨年夏、ディーリング事業を一時休止した中原証券の印南裕幸執行役員は、「小泉政権下のカラ売り規制に加え、その後の株の値動きの少なさが不振に追い打ちをかけた」と語る。

東京証券取引所が10年に導入した高速取引システム「アローヘッド」も痛手となった。海外勢による自動売買が普及した結果、ディーラーが肉眼で取引する従来型の手法が通用しにくくなったとの指摘は多い。

攻める経営者は一部、廃業への課題も

そうした状況下、将来への布石を打つ企業もある。49年創業の老舗、三田証券は、「かつてはコテコテの地場証券だった」(三田邦博社長)というが、現社長就任後に融資関連や投資銀行、プロップ投資を強化して業態を転換。11年3月期まで8期連続で最終黒字を計上した。「直接金融が果たすべき役割はそうとう多い」と三田社長は話す。

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