老舗中小証券会社の苦境、相次ぐ廃業・撤退 東証の合併上場を契機に加速も
日本最大の証券街、東京・日本橋兜町。79年前に同町で産声を上げた老舗証券会社が3月末、証券業を廃業し、別会社に生まれ変わった。十字屋証券。今も同名の看板は残るが、社名は「十字屋ホールディングス」へと改まり、投資顧問会社として一歩を踏み出した。
創業家3代目の安陽太郎社長は「もう日本でブローカレッジ(証券仲介業)を続けるのは無理。今後、他社の廃業も続くのでは」と語る。
株手数料自由化に加え商品ニーズ拡大が痛手
証券業界の経営環境は厳しさを増している。日本証券業協会の会員数は3年連続で減少。目立つのは、中小証券の廃業だ。2012年に入り、十字屋証券以外にも堂島関東証券、神崎証券などが証券業から撤退。「ニュースには出ないが、兜町の中小証券の看板が次々消えている」(業界関係者)との声が聞こえる。
一般投資家向けに幅広く金融商品を提供する大手証券やネット専業証券と比べ、中小証券は地域に根付いた「地場証券」と呼ばれるように、特定の富裕層相手の対面営業が一般的。商品の中心は株式で、小まめに推奨銘柄の情報提供を重ね、顧客との信頼関係を築いてきた。
しかし近年、対面営業には逆風が続く。その一つが株取引の手数料自由化だ。1999年の自由化以降、格安の手数料が売りのネット証券が相次ぎ誕生。その結果、個人投資家の多くはネットへ移り、今や個人の株売買は約8割をネットが占める。