「彼らを全面的には否定できない」犯罪学の専門家が指摘「私人逮捕系YouTuber」が“警察の代わり”になるーーが暴論とも言い切れないワケ

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確かに我々の身近でも、消防署と地域住民による消防団が、火事や災害に備えて活動している。それに近い仕組みだ。

「理想的なのは、自律分散型の組織です」と小宮氏は続ける。自律分散型とは、上からの指示や命令がなくても、自分たちで考え判断し、スピード感を持って行動できること。

基本方針を理解していることを前提に、ユーチューバーたちが活動分野や専門分野を活かして治安維持に取り組む。そうすることで、警察だけに頼らない、治安の保たれた社会の実現が見えてくるという。

彼らを全面的には否定できない

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現在のように、ユーチューバーたちを単に肯定あるいは批判するだけでなく、共存共栄する道を社会としてデザインしていくべき、というのが小宮氏の提言だ。

「警察ができる前から自警団はあったわけです。戦国時代に農民が、村の安全を守らないといけないのでお金を出して、武士が軍隊を組織したあの感じと全く同じなんです。自警団は、『無関心が最大の敵』だと昔から言っている。警察ができてからも、自警団はかなり活躍していた。

そういう物差しで測ると、私人逮捕系ユーチューバーの存在も、『みんな、治安維持に無関心になるなよ』というメッセージではあるんですよね。彼らを全面的には否定できない。ただし、かつて自警団が超法規的行動を取ったり、武装したりという苦い経験もあるので、公のコントロールはどうしても必要です」

警察がユーチューバーたちに治安維持の業務委託をする。賛否が起こりそうなアイディアではあるが、人手不足をアウトソーシングで解消するという方法論そのものは、理に適っていると言える。

もちろん、仮に実現したとしても、ユーチューバー側が警察の下で活動することに、同意するかは全くの未知数であるが。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京生まれ。大学中退後、広告代理店勤務を経てフリーのジャーナリストに。

社会問題や人物ルポ、歌舞伎町や夜の街を題材に執筆。陽が当たりづらい世界・偏見を持たれやすい世界で生きる人々や、そこで生じている問題に着目した記事を書くことを使命としている

著書に『炎上系ユーチューバー 過激動画が生み出すカネと信者』など。新宿ゴールデン街「プチ文壇バー月に吠える」、四谷荒木町「ブックバーひらづみ」の店主でもある。

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