傘寿を牢獄で迎えたアジアの元指導者2人/アウンサンスーチーとドゥテルテ/キャラは違えど、いまも国家の命運握る

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ドゥテルテは2017年3月20日、輪番で務めるASEAN議長としてミャンマーの首都ネピドーを訪ね、アウンサンスーチーに薔薇の花束とともにイスラム教徒ロヒンギャへの寄付として30万ドルを手渡した。

国軍に弾圧され多くが難民化して苦境にあったロヒンギャへの対応でアウンサンスーチーは欧米から批判されていた。ドゥテルテは2018年1月、ASEAN首脳会議で彼女と話す機会があったと述べ、「ノーベル平和賞受賞者の立場と、現在の混乱の間に挟まれている彼女に同情する。激しく批判されているが、人権活動家など気にすることはない、騒がしいだけの連中だと助言した」と応援演説をした。

ドゥテルテも麻薬戦争で人権団体から批判にさらされており、同病相憐れんだ格好だ。

ドゥテルテは記者会見などで、聞かれたことも聞かれないことも延々としゃべる。会見はときに3時間を超えた。ミャンマーに関するドゥテルテの「おしゃべり」に対して、アウンサンスーチーの反応や発言はほとんど報じられていない。相手にしていない、あるいは無視(!)である。

投獄してもなお政権にとっての脅威

個性の違いは際立つものの、それぞれのキャラによって国民から絶大な支持と人気を誇る両者を現政権は無視できない。投獄し世間から遠ざけてもなお衰えない人気は権力者にとっては脅威である。

ドゥテルテの長女で副大統領のサラを筆頭とする陣営や支持者は、ドゥテルテを逮捕し移送したマルコス政権と厳しく対峙し、第三国に滞在させる形での保釈をICCに求めている。

サラはマルコス派が多数を占める下院から弾劾訴追されたものの、最高裁が弾劾手続きの一部が憲法に違反するとして裁判を差し止めた。先に実施された上院選では同情票の受け皿となったドゥテルテ派候補者らが大きく票を伸ばしている。再び弾劾訴追される可能性は残っているものの、それを切り抜ければ2028年の次期大統領選の最有力候補となる。両陣営の争いを中心に進む今後の政局に最も大きな影響力を持つのは獄中の父親の存在だ。

ミャンマーの軍政は今年末から総選挙を実施すると発表した。クーデターまで政権を率いていたNLDが参加せず、アウンサンスーチーを獄中に置いたままでは選挙がどのような結果となろうと、国内外で真の正統性を認められることはない。政治的混乱、事実上の内戦の収束には彼女のプレゼンスが欠かせない。

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