離陸間近「ホンダジェット」に死角はないか ボーイング超える年商が他社には脅威だ

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──競争相手は。

セスナをはじめかなりの民間機製造会社が航空機シリーズの1分野として手掛ける。この分野は景気変動や規制強化などに伴い浮沈を繰り返してきた。しかし経営危機に陥っても将来性があるから引き受け手が出てきて、だいたい大手の傘下で生き延びる。だからボーイングのように母体の安泰ぶりが気になる。

ホンダジェットの飛行機としての評価は高い。燃費、性能も競合機に比べいいし、室内も騒音が少なく広い。エンジンを主翼の上に載せたメリットだ。それで個室トイレも可能になった。確かに整備ネットワーク作りに問題はあるが。

──MRJにはカナダのボンバルディアやブラジルのエンブラエルという好敵手がいます。

そう。それに、ロシアのスーパージェット100、中国のARJ21という存在もある。中国は初飛行が終わっていて、09年に引き渡しになると当初されていたが、いまだに引き渡しが始まっていない。ホンダも03年に初飛行を行ったが、引き渡し開始は今年にもとなった。これらの先例からすると、MRJの場合は17年にまずANA(全日本空輸)に引き渡すとしているが、本当に大丈夫なのかとなるわけだ。

──航続距離は?

1回の給油で2100キロメートル。東京から台湾の台北までだ。今のガルフストリームの20席クラスは、普通の旅客機と同じように1万2500キロメートルの太平洋を渡れるので、けっこう売れている。小型機は燃料がそれほど積めないから、おのずと航続距離が決まってくる。

国産化率はどうなのか?

──国産化率が問題にされます。

日本製品の占める国産化率は15%弱。たとえばランディングギアは、世界的に認められている住友精密工業製。同社は直接納めるサプライヤーになった。ホンダが米国で生産するのは経済摩擦対策という面が強い。シビック以来、自動車で米国に進出して市場を侵食したわけだ。そういうメーカーが、最後の牙城といわれる航空機産業まで侵食するという警戒感がある。現地調達率を大きく上げれば、米国企業だと批判をかわすことができる。

──トヨタ自動車はどうしているのですか。

正直言って本当のところはよくわからない。MRJの製造会社に三菱商事と同じく100億円出している。トヨタOBの中には超音速輸送機(SST)をやるべきと言う人もいる。また、航空機産業ではM&Aは普通のことだし、出資した富士重工業との関係もあり、できないことはない。中京圏におけるMRJ関連の「城下町」とトヨタの拠点はオーバーラップしている。協力会社を共用できるわけだ。もちろん資金力は問題なし。ホンダジェットの行く末をそっと見守っているのではないか。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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