「老いの境地」、56歳・浜田宏が金融市場に挑む デル、HOYAでの経験を活かせるか
また、住宅ローンを借りて、家を買ったあとには、当社とお客様の間には、35年間という長期間のお付き合いが始まります。しかし、これまでの関係は貸しっぱなし。われわれは、家族構成がわかり、収入、勤務先もわかる。残債はどれぐらいあるのか、これから子どもが産まれる予定があるといったこともわかる。これだけの個人情報を、長期間に渡って安定的に持つことができるのは、住宅ローン会社ぐらいのものです。アマゾンには、家族構成や残債なんてわかりません。住宅ローン会社だからこそ、ずっと、お客様の側にいることができるわけです。
住宅ローン専業会社という狭い定義ではなくて、家を買う、家に住むという住生活の真ん中にいて、お客様の住生活を応援する企業であるというように定義を広げると、不動産探しのお手伝いをしたり、住宅ローン以外のさまざまなローンの提案ができたりする。引っ越しのお手伝いもできる。介護施設が入るときにもお手伝いができる。これが、住生活プロデュース企業ということになります。
小さい会社を経営するのははじめての経験
――外からアドバイスをしてもよかったのでは?
最初は、外からアドバイスをする形で手伝っていましたが、これまでの社内体制のままではそれらが実現できないと言い出した。「なんでできないの。それならば俺がやると」という話になって(笑)。そう決まったのが、昨年秋のことでした。こんな小さな会社は経営したことがないという規模ですよ(笑)。
ただ、創業家がいるわけでもない。SBIグループからも独立している。いちばん小さな会社だが、これだけの自由度を持ちながら、その一方で、責任と権限とリスクを伴った仕事ができる。それが楽しみになった。私自身も資本を入れています。経営者であるとともに、投資家の立場でもありますから、この会社からは逃げられない立場で仕事に取り組んでいます。
――これまで経験がない金融業界に飛び込むことに不安はありませんでしたか。
なかったですね。不安がなかった理由はいくつかありますが、最大の要因は、私の「性格」ですね。つねに多方面に興味を持っていて、新たなことに挑戦したいという気持ちが強い。もともと、ひとつの業界で長く積み上げて、その業界の専門家になったり、その業界の主(ぬし)になったりといったような、小さな世界で大きな存在になることには興味がないんです。デルで10数年やってきた経験がいちばん長いのですが、ここでは業界が変化するダイナミックさやスピード感を学びましたし、HOYAでは、精密機器、カメラ、メディカルといったさまざまな分野を経験し、15ぐらいの事業を一手に引き受け、事業の再生に取り組むといった経験もできました。
HOYAの場合、海外売上高が70%、外国人社員が90%という構成。デル時代を含めて、多様性という環境のなかで、経営者としてのやり方を身につけることができたといえます。さらに、HOYAの役員を退任後も、さまざまな会社の顧問や、社外取締役をやってきました。いまもコクヨの社外取締役をやっていますが、化学メーカー、半導体メーカー、メガネメーカーなど、様々な業種において経営に携わることで、浅く広く勉強し、間口が広くなった。こうした経験がむしろ生かせると考えました。
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